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岩手銀行(8345)の株主提案を株主構成から分析!賛成率や行使率予測の方法も解説

岩手銀行(8345)の株主提案可決の可能性を株主構成から分析

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6月22日に開催される岩手銀行の定時株主総会ですが、今回シルチェスターという英国投資家から株主提案を受けています。株主提案はすでに会社側が決定している年間80円の配当に加えて、76円の特別配当の実施を要求しています。

当ブログでは引き続き上場企業の”株主”に焦点を当てた分析を行っていきます。そのため今回はこの株主提案はどれぐらい可決する可能性があるのか、どれぐらいの賛成を獲得できるのかを岩手銀行の株主構成に基づき分析しました。

結論としては可決の可能性は”低い”です。やはり事業会社や金融機関との持ち合い株式の比率が高く、その持ち合い先が反対又は棄権票を入れない限り、可決は難しいと見られます。しかしシルチェスター等の機関投資家が株主提案へ賛成票を入れると可決はしないまでも、賛成率が高くなることも考えられます。これによりさらに増配へのプレッシャーが高まることも想定されます。実際に岩手銀行はシルチェスターの株主提案を受けて増配していましたので、この総会の結果次第では岩手銀行は追加で何らかの資本政策に動くこともあり得ると思います。今回はその賛成率を株主構成に基づき分析し、算出しています。

(追記)岩手銀行の臨時報告書が公開されました。結果は株主提案の議案への議決権の行使率が83.6%で賛成率22.31%でした。想定行使率はピッタリ賞でした。ただやはり賛成率は厳しく、30%にも到達しませんでした。シルチェスターを除くと1.2万票の賛成票で機関投資家の1/3しか賛成しなかったものと見られます。

今回は岩手銀行について分析しましたが、この分析手法は他の上場企業においても使うことができます。そのため株主提案が可決するか分析したい方や企業のIR担当者などで自社のリスクを確認したい方はぜひ参考にしてください。

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岩手銀行の株主構成と大株主

まず株主構成です。株主構成を見ると地方公共団体をはじめとした持ち合い株式と見られる保有が最大で発行済株式の40%あります。この40%は地方公共団体等8%+金融機関19%+その他法人13%の合計です。”最大”としている理由は金融機関の保有株式数のうち大株主には出てきていない機関投資家保有の株式数がまだ金融機関19%に含まれているからです。大株主から機関投資家の保有である株式数は国内投資家として保有割合を別にしています(グラフ国内投資家13%)。
<株主構成> *2021年3月末時点(直近はまだ開示されていないため)
岩手銀行株主構成

<大株主> *2022年3月末時点(招集通知より作成)
*赤色で塗りつぶした株主が機関投資家株主
岩手銀行 大株主

各株主の行使の影響度

次に各株主の株主総会のおける影響度と想定される賛成率を分析します。

行使の影響度

前提として株主総会では議決権を行使しなければ、いくら株式を持っていても賛成、反対のどちらにも加算されません。そのため影響度や賛成率を分析するには、各株主の何%が行使をするのかを算出しなければなりません。そしてこれに基づき議案の可決、否決を決める分母となる数字である「行使された議決権個数」を算出します。なお、今回の配当議案では「行使された議決権個数」の過半数(50%超)の賛成が入ると可決となります。

ここまで説明した「各株主の何%が行使をするか」「行使された議決権個数」を算出したものが以下の表です。
岩手銀行 行使影響度表

先ほどの株主構成表における所有割合が左から3列目「所有割合」の数値となります。この表の所有株式は議決権個数とするため単元にしています。
そして、それぞれの株主が何%(何個)を行使するかを試算したものが、想定行使個数です。この想定行使個数を全て合計したものが、今回の株主総会の可決、否決にの分母となる行使された議決権個数の合計である総行使個数(想定)となります。
この数値は上記表で言うと右から2列目の下から2行目「146,395個」です。この「146,395個」を分母として、この過半数(50%超)が賛成すると株主提案が可決することになります。この分母に対する各株主の影響度が一番右の列の「行使の影響度」となります。例えばシルチェスターが株主提案に賛成すると、シルチェスターだけで13.8%の賛成率となります。ただしシルチェスターの場合は1社ですので計算がシンプルで良いですが、例えば国内投資家「22,520個」は複数社の国内投資家が保有していますので、統一して賛成、反対されるわけではありません。

そこで賛成率を予想するためにはこのうち何%が賛成するかを試算する必要があります。

なお、この総行使個数(146,395個)や行使の影響度は適当に算出したものではなく、昨年の岩手銀行の株主総会における総行使個数(146,101個)や各株主の一般的な行使率に基づき算出しています。株主提案などの特殊な状況下では行使率が上がる傾向にありますので、実際にはもう少し総行使個数が多くなる可能性がありますが、全体の趨勢を分析するのには十分です。

賛成率の試算

最初に可決の可能性が低いという結論になった理由として、以下の表をご覧ください。
賛成率計算

この表は各株主の何%が賛成するかの数値を仮で置き、想定行使個数に掛け合わせて賛成個数と賛成割合を算出したものです。
これを見ていただくとシルチェスターは株主提案を出した当事者ですので100%の賛成は当然ですが、それ以外でも外国法人等(海外投資家)の全てが賛成し、かつ国内投資家の半分が賛成、金融機関に含まれている一部の国内投資家が賛成して、やっと賛成率が44.3%です。実際には外国人等(海外機関投資家)の全てが賛成することは考えづらいですので、さらに賛成率が低くなる可能性の方が高いです。またこの試算では個人投資家の賛成する割合も50%と高めに設定していて、この44.3%という賛成率です。

このように現実的でない賛成率予想をしても可決できる50%超の賛成率に届きませんので「可決する可能性は低い」ということがわかりました。

それではもう少し現実的なラインで考えると賛成率はどれぐらいになり得るのか、もはやこれは私の匙加減なので想定の域は出ませんが、30%程度であれば賛成票の獲得が可能だと思います。ただし今回は議決権行使助言会社であるISSの推奨レポートに対して会社側の反論記事が出ていないことを鑑みると、株主提案へ反対推奨している可能性があります。この場合、外国法人等(海外投資家)や国内投資家の賛成する割合がもっと下がる可能性があります。
賛成率現実的ライン?

最後に

以上の通り、株主構成から賛成率を分析した結果、岩手銀行の株主は金融機関等との持ち合い株式の保有割合が高いことにより、株主提案が可決する可能性は低く、シルチェスターの株主提案はポーズで終わると見られます。しかしながら持ち合い株式の解消やスチュワードシップコードの推進などにより、これからもずっと安泰とは言えません。また株主提案が可決しないまでも岩手銀行サイドは何らかの対応をしなければ持ち合い先も協力し続けることが難しいと想定されます。今回の分析結果から可決は現実的でないので、シルチェスター側も可決するとは考えていないと思います。そのため昨今のOasisなどと同じようにプレッシャーを与えるという意味合いが強いと見られ、株主提案を公表した時点で岩手銀行が普通配当を10円増配、記念配当10円の実施で勝負には勝っていたということかもしれません。

追記:臨時報告書の解説

議案総行使賛成反対棄権
第5号議案(株主提案)83.6%22.46%77.54%0
143,97532,226111,6390

有価証券報告書から総株主の議決権個数は172,202個でしたので、これを分母に総行使率(83.6%)を算出しています。賛成率、反対率は総行使の個数を分母に算出しているため、臨時報告書記載の比率を異なります。

今回賛成率は22.46%と厳しいものになりました。これは岩手銀行が株主提案後に形なりとも増配をしたことで多くの保守的な株主にとっては賛成する理由ができたことに起因します。賛成票(32,226個)からシルチェスターが持つ議決権は20,209個を除くと12,017個の賛成票となり、これはシルチェスター以外の議決権行使された個数のうち9.7%が賛成したことになります。主には機関投資家が賛成したと見られますので、機関投資家の持分を分母とすると1/3が賛成したことになります。このように事前予想でも厳しいことを想定していましたが、それよりもさらに厳しい賛成率でした。そのため岩手銀行へのプレッシャーはやや弱まると見られます。しかし、繰り返しになりますが、株主提案への賛成率の低さは持ち合い先の賛成票によって成り立っていますので、今後持ち合い株式の解消などが進むことを考えれば何かしらの資本政策を検討する可能性は高いと見られます。

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EARL

EARLFIIOファン

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