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株主の解説

株主総会の必見!議決権行使助言会社について解説

今回は株主総会において重要な役割を果たす、名前を聞いたことあるけどその存在や影響についてあまり知られていない議決権行使助言会社について解説したいと思います。

わかりやすく説明するために個人的な見解も含んでおります。

株主提案やTOBなどを狙ってイベントドリブン投資をされたい方、これからIR業界に携わる方は必見です。

議決権行使助言会社とは

議決権行使助言会社とはその名の通り、機関投資家に対して「議決権行使に関する助言」をする会社です。この助言とは株主総会で上程される議案に対して主に賛成と反対を推奨するレポート(助言レポート)を発行することで一般的にネットで調べてもこのように記載してあると思います。

ただし、実はここにはあまり知られていないポイントがあります。この助言レポートには賛成と反対の推奨をするだけでなく、例えば社外取締役であれば独立性の”あり”、”なし”やその議案を判断したポイントがレポートに記載されています。

これによって機関投資家は独自に助言レポートを解釈し、賛成か反対かを判断することができるのです。そのため「〇〇社の〇〇議案に対して議決権行使助言会社が反対推奨」となっても、すぐに否決には直結しないのです。そこで企業は発行されたレポートに対して見解を示すことで反対推奨となった議案においても機関投資家の賛成を獲得しようとします。これらの一連のやり取りが株主総会シーズンになると多く報道されます。

議決権行使助言会社の影響はなぜ大きいのか

それではなぜここまで議決権行使助言会社の影響が大きくなったのでしょうか。

昔は機関投資家にとって議決権行使はあまり重要視されていませんでした。なぜなら賛成だろうが、反対だろうが株価には影響しないからです。特に日本では海外機関投資家の割合が多い一方で監査役設置会社や買収防衛策、持ち合い株式など日本独自のコーポレート・ガバナンスが発展したことにより、理解することがより難しく議決権行使において消極的でした。

しかし、2012年に発足した安倍政権による日本再興戦略によって企業のコーポレート・ガバナンス改革が行われ、また昨今のESGの需要の高まりによって、年金基金や投資信託を購入する個人などの資金提供者の関心が高まったことにより、機関投資家も企業のコーポレート・ガバナンスについて物申すようになったのです。

その機会で日本においても広く名を知らしめたのが議決権行使助言会社であり、最も有名な会社はISS(インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ)社です。おそらく株主総会シーズンになると一度はこの会社の名前を目にされたことはあるのではないでしょうか。

”昔は”機関投資家が議決権行使に関心がありませんでしたが、一方でISS社などの議決行使助言会社は”昔から”議決権行使に特化した企業の分析を行ってきたのです。

そのため日本においても急速にコーポレート・ガバナンスの関心が高まる中で、機関投資家はISS社に代表される議決権行使助言会社を利用して、議決権行使を積極的に行うようになりました。

これは簡単に言ってしまえばコーポレート・ガバナンスに関する分析を外部委託しているのです。株式投資においても調査に特化するセルサイドアナリストとという存在がいますが、そのコーポレート・ガバナンス版だと言う方がわかりやすいかもしれません。

最近ではさらなるESG対応へのニーズの高まりから、ESGアナリストという存在が出てきていて、機関投資家自体がコーポレート・ガバナンスを分析できる専門人材を抱えているケースも増えてきています。それでも、そのような専門人材を抱えることができる機関投資家は企業と同じで大手に限られます。そのためまだまだ多くの機関投資家で議決権行使助言会社が利用されているのです。

議決権行使助言会社における賛成・反対の判断基準

議決権行使助言会社のホームページには議決権行使に関する基準(ガイドライン)が開示されています。今回ISS社の他、もう一つ有名な助言会社としてグラス・ルイス社がありますので、その2社のガイドラインをご紹介します。

ちなみにどちらの会社も以前は英語版のガイドラインしか開示していませんでしたが、日本でのコーポレート・ガバナンスへの関心の高まりを受けてか、日本語のガイドラインも開示するようになりました。

ガイドラインは毎年更新されていますので、後々リンク切れを起こす可能性があるため、それぞれのリンクはガイドラインのトップに遷移するようになっています。各リンクから、日本又はJapanと記載されているファイルをクリックすると日本企業向けのガイドラインを確認することができます。

<ISS社のガイドライン開示リンク>

ガイドラインの見方

ガイドラインは議案の種類ごとになっています。

議案の種類とは、例えば剰余金処分(配当)議案、取締役選任、監査役選任、定款変更、役員報酬などといったものです。社外取締役や社外監査役の独立性に関する基準は共通であることがほとんどです。

ガイドラインの全てを説明するとキリがないので、今回はISS社の取締役選任議案を例に見方を解説します。取締役選任議案のガイドラインを見ていただくと監査役設置会社、委員会等設置会社、監査役等委員会設置会社と分かれていますが、いずれも概ね基準は同じですので、今回は監査役設置会社のガイドラインを取り上げます。
この中で確認すべきポイントは「基準の内容」と「注記」です。この「注記」の書き方がガイドラインの見方を非常にわかりにくいものにしています。基準に対応する注記はページのフッターに記載してあります。

<ISS社の取締役選任議案のガイドライン抜粋>

議決権行使助言会社

ISS社の取締役選任議案(監査役設置会社)ページのフッターに記載の注記

議決権行使助言会社

このうち一つ目のガイドラインを見てください。

「資本生産性が低く(過去5期平均の自己資本利益率(ROE)が5%を下回り)かつ改善傾向に(注記5)にない場合(注記6)、経営トップ(注記7)である取締役(注記89)」に反対推奨がされることがわかります。文章に小さく番号が降っている箇所をあえて(注記○)と記載しおきました。

それではこのガイドラインに対応する注記を確認しながら正確に書くとこのようになります。

「資本生産性が低く(過去5年平均ROEが5%を下回り)かつ過去5期の平均ROEが5%未満で直近会計年度のROEも5%未満である場合、社長、会長である取締役」に反対推奨されるとなります。

このように改善傾向や経営トップといった曖昧な記載においても多くは細かな基準や対象が定められていて、その多くは注記に記載してあります。そのためガイドラインを確認する際には必ず注記と合わせて確認してください。

株式投資への活かし方

繰り返しになりますが、議決権行使助言会社の影響は大きいです。このISS社とグラスルイス社が反対推奨を出した議案は反対率が高くなりやすいです。翻って賛成推奨された議案は反対率が低くなりやすいです。

例えば配当議案の株主提案、経営トップ交代のある議案、MBOなど企業再編に係る議案が上程された際にはその議案が可決、否決されるかで大きく株価が動くことになります。また可決となった場合でも反対票が相当数あれば企業側は何かしらの対策を講じる必要が出てきます。

そのため、その議案が可決されるのか、否決されるのか(反対票が多くなるか)の一つの判断材料として、議決権行使助言会社の推奨を確認するという活かし方があります。ただしこれらの議案には決まった基準がないのでどちらになるかは報道や企業側が開示しない限りわかりません。

そこで普段の株式投資に活かす方法としては、その企業が業績改善に対してどれぐらい機関投資家からプレッシャーを受けているかを判断するのに使うことです。

先ほど記載した通り、可決となっても反対票が相当数入った場合には企業も建前上、何かしらの対策を講じなければ世論が黙っていないでしょう。例に挙げた取締役選任議案のガイドラインで言えば、反対推奨においてROE5%が一つの基準になっています。そのため5%未満の企業は機関投資家からプレッシャーを受けている可能性が高いので業績改善への取り組みを積極化させる可能性があります。

このプレッシャーがどれぐらい強いかは機関投資家がどれぐらい保有しているかが関わってきますので、こちらの記事もぜひ参考にしてください。

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