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株主の解説

人気IPO VTuber運営「 ANYCOLOR(エニーカラー)」の「株主」に焦点を当ててIPOを詳しく解説

しばらく相場環境が悪く、IPOにおいても大型、注目案件が少なかったですが、ついに来ました!
6月8日にVTuberグループ運営のANYCOLOR(エニーカラー)が上場します!VTuberは日本だけでなく、アジアをはじめとした海外でも人気コンテンツです。そのためこれまでSaaSを中心としたITサービスに続き注目されるテーマのIPOになると思います。

人気テーマでありながらエニーカラーのIPOは新株発行・売出金額が小さいです。しかし、一方で上場後も売却可能性の高い株主が多く残ります。そのオーバーハングに対する懸念から機関投資家に避けられやすいIPOとなります。だからこそ機関投資家よりも個人投資家の人気が重要なIPOで投資妙味のある銘柄です。
6月8日上場初日は気配値上限3,520円まで上がり、初値が付きませんでした。2日目の6月9日に初値が4,810円とIPO価格の約3.1倍の株価となりました。IPO価格のバリュエーションが抑えめでかつ個人の人気が高かったことが要因です。

当ブログでは引き続き、このように「株主」に焦点を当ててこのIPOについて分析、評価をしていきたいと思います。IPO評価において上場時、ロックアップ解除時に売却する株主がどれぐらいいるのかは需給に関わる重要なポイントになります。そのため上場時の株主の変化を分析しながらIPO評価を解説しています。
また新興企業では新株予約権が従業員に割り当てられており、上場後すぐに行使・売却され株価に影響を与える可能性があるため、その影響についても確認していきたいと思います。

新株発行・売出の金額が小さいことからIPO後から参加する方が多くなると思います。この株主に焦点を当てた分析は上場後の株価にも関わるため、IPOに参加される方だけでなく、この銘柄が気になっている方、上場後に投資を検討されている方もぜひ参考にしてください。

ANYCOLOR(エニーカラー)のIPO概要

「にじさんじ」を運営する大手VTuberグループ運営の「ANYCOLOR(エニーカラー)」が6月8日に上場します。5月23日に仮条件が決定し、1,490円〜1,530円となりました。また5月31日に募集・売出価格が決定し、仮条件上限の1,530円となりました。これにより時価総額は約458億円となり、新株発行・売出の総額は23億円となりました。なお、海外機関投資家への販売分は161,200株でたったの2.4億円でした。独自に分析した事前予想の通り、機関投資家が様子見している可能性が高いです。一方でオーバアロットメントでの追加売出が234,800株(3.5億円)あり、個人投資家への人気は高いです。

<IPOスケジュール>
5月24日〜5月30日 ブックビルディング
5月31日 価格決定
6月1日〜6月6日 申込期間
6月7日 払込期日
6月8日 上場

初期的なIPO評価

VTuberというテーマから人気化することが想定されます。そのため23億円はやや少ないように見えます。また昨今の相場環境を踏まえてか、これまでの人気IPOのような強気なバリュエーション(PSR10倍超)ではなく、PSRで6.4倍、PERで51.3倍と高い成長をしている企業にしては抑えめな仮条件の設定となっています。
黒字化もすでにしていますし、日本だけでなくアジア市場にも強いVTuber運営ですから日本だけで展開するSaaS銘柄よりも成長性はあると思いますが、バリュエーションは厳しいですね。

初値について

6月8日の上場日初日は独自予想の通り、個人の人気が高いことから、初値がつかず気配値上限3,520円のまま引けました。2日目は買付代金の即日徴収や成行買呼値注文の禁止など一般的なIPO同様の規制がつきます。また明日の気配値上限は2.3倍(8,096円)とされました。そのため明日は初値が付く可能性が高いと見られます。
(追記)初値は4,810円とIPO価格の約3.1倍の株価となりました。バリュエーションの割安さや個人への人気の高さが垣間見える初値となりました。しかし依然としてオーバーハングの懸念は残っており、中長期的な株価を分析する上でもエニーカラーの株主の状況を確認しておくことは必須です。

それでは株主の分析をはじめます。

ANYCOLOR(エニーカラー)株主に焦点を当ててIPOを解説

それではまず「ANYCOLOR(エニーカラー)」の株主の状況から見ていきましょう。

上場後の株主変化とその影響

<「ANYCOLOR(エニーカラー)」の株主一覧>
エニーカラー株主一覧

ANYCOLOR(エニーカラー)の株主を属性に応じて色分けしました。
現在、上場前となりますので大量保有報告書が出ていないことから属性はネット等で調べた限りとなります。

有価証券届出書(目論見書)ではどの株主が何株売出しするかが記載されており、その売出株数をもとにIPO売出後にそれぞれの株主が何株保有しているかを分析しています。この株数が上記表右から3列目の数値です。

また色分けした株主の属性ですが、ロックアップ解除後に売却可能性が高い順に書くと下記のようになります。上場後すぐに売却が可能な株主は、今回IPOの新株発行・売出で購入した株主となります。

  1. 新株発行・売出 : 黄色
  2. ベンチャーキャピタル(VC): 黄色
  3. 海外ファンド : 青色

グレーにした株主は事業会社や個人投資家、役員となりますので企業価値が大きく下がるような売り方はしないと想定していますので、今回の分析からは除外します。

このように整理してみるとANYCOLOR(エニーカラー)の株主のうち、通常IPOで売出しを行うベンチャーキャピタル(VC)、海外ファンド(投資会社)のいずれもほとんど売出ししません。これらの株主には上場日から180日間のロックアップ(売却できない)期間がありますが、上場後に売却可能性のある株主を相当数残しての上場となります。この相当数残してしまうことによるデメリットは後ほど解説します。いずれにしても売出ししない要因として現在の価格では納得していないという可能性があります。

次に各株主属性で集計した所有割合を見ていきます。

上場後株主の所有割合から分析

<ロックアップ後に売却する可能性のある株主の所有割合>
ANY所有割合

先ほどの売却可能性が高い株主の所有割合は

  1. 新株発行・売出分 : 5.2%
  2. ベンチャーキャピタル(VC): 12.8%
  3. 海外ファンド : 21.7%

所有割合で見ると2+3の投資会社だけで30%超を占めています。これが先ほどデメリットになるとした理由で、売却可能性のある株主を相当数(今回は30%超)残して上場することは、上場後のオーバーハング(上場後での売却による株価上昇の抑制、株価下落圧力の高さ)に対する懸念となり得るでしょう。特にオーバーハングは機関投資家が嫌う傾向にあります。機関投資家が様子見することを考えれば上場後の株価形成においては個人投資家の人気が重要な銘柄と言えます。

次に各株主属性の所有金額で集計してみます。

上場後株主の所有金額から分析

<各株主属性の保有金額>
金額別

金額で見るとより大きさがわかりやすいと思います。
IPOで当選した株主は24億円と小さいため、おそらくIPO初日からロックアップ解除日までは人気化すれば比較的、需給が逼迫する可能性があります。
次にロックアップが解除される180日後という観点では、VCは59億円のため、株価が大きく上昇していれば問題ない水準でしょう。しかし、海外ファンドは100億とかなり大きい金額を保有しており、これは時価総額の約4分の1にあたりますので動向が見逃せません。

また新株予約権の金額を一番右に追加しました。新株予約権は全部で40億円近くあります。もちろん割当株数の多い役員等に対してはロックアップがありますが、従業員向けにはロックアップがありませんので念の為、留意しておいた方が良いでしょう。

ANYCOLOR(エニーカラー)のIPO評価まとめ

これまでの分析結果をまとめますとANYCOLOR(エニーカラー)のIPO評価では下記がポイントです。

  • 上場直後は新株発行・売出金額が小さいので需給が逼迫する可能性あり
  • 投資会社が上場後も30%超保有し、これがオーバーハングに対する懸念となり機関投資家は様子見する可能性が高い
  • 特に「海外ファンド」株主の動向には注目
  • そのため個人投資家の動向が重要

また今回のIPOは米国などの海外機関投資家に販売しない方式のIPOになっています。このIPOの販売方式により、海外機関投資家の割当先はアジアのヘッジファンドが中心となります。そのため新株発行・売出の金額は小さいながら上場直後にヘッジファンドの売却が想定され、株価のボラティリティが高まる可能性もあります。
今回、その海外機関投資家への売出額はたったの2.4億円で規模がかなり小さいです。独自に分析した事前予想の通り、機関投資家が様子見している可能性が高いです。

つまり「株主」という観点からは機関投資家に避けられやすいIPOですが、一方で人気テーマにおいてこの株主構成による懸念は投資妙味になり得ると思います。

以上です。上場後に動きがあれば情報を追加したいと思います。
機関投資家やヘッジファンド株主についてはこちらの記事で解説しています。

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