目次
FIIO FW3が日本で7月28日に発売決定となりました。価格は15,400円です。すでに中国FiiO公式Twitterから6月12日に発表されていましたので、約1ヶ月遅れの国内発売となりました。価格面で、海外価格はドルベースで約100ドルです。1ドル=140円で計算した場合は1.4万円となります。そのため現時点の円安の状態では、FW5と異なり海外価格との差は小さく済みました。なお、中国FiiOに直接確認したところ、FW3本体には技適マークがプリントされていないそうで、FW5同様、日本販売モデルのみシールが貼られるようです。そのため私も日本版を予約し、7月28日に入手できましたので今記事では今後、FW5との比較を含めたレビューを更新していきます。
はじめにFIIO FW3の簡単な概要です。ドライバー構成はシングルダイナミックドライバー型で、BTチップ、DACチップの構成は上位機種のFW5と同じです。そのため機能面はFW5と同じながら、1.5万円(海外は100ドル)というリーズナブルな価格を実現していてます。
レビュー 総括(Summary)
まずFIIO FW3のスペックを切り取ってみた時に、FIIO FW3はFW5同様、音質が良いとされるLDACとaptX adaptive双方のコーデックに対応していることやAKM DACチップを左右独立で搭載していることなどを考慮すれば価格がリーズナブルで魅力的な選択肢です。加えてこの手の音質特化型と呼ばれるTWSでは珍しく、FIIO FW3はホワイトカラーがあり、機能面ではゲーミングモードが搭載されています。このことからノイズキャンセリングやアンビエントモード(外音取り込み)が不要で、リーズナブルな価格で音質、デザイン(ホワイトカラーの統一)を重視したいという方にとってFIIO FW3はおすすめのTWSです。次にFIIO FW3のサウンド面です。シングルダイナミックドライバーのTWSの中では比較的、音の厚みはあると思います。バランスはかまぼこ(ボーカル付近が前に出るサウンドバランス)です。低音や高音は控えめでボーカルを補完する程度のバランスとなっていることから、ボーカルが非常にクリアで、歌モノやACGジャンルの声に特化している印象です。
Pros
- 対応コーデック、デュアルDACがハイスペック
- 歌モノ、ACGジャンルの声に特化したサウンド
- 高音の歯の音(刺さり)はない
Cons
- ノイズキャンセリング、アンビエントモードは非搭載
- LDAC接続安定性は物足りない
- イヤホン本体をケースに閉まっている状態でバッテリーが消耗する場合がある
- 音の輪郭は曖昧でROCKなど楽器が前に出る曲では不得手
60秒のレビュー
FIIO FW3 発売日・価格
発売日:7月28日(中国6月17日) 価格:15,400円(海外99.99ドル)
FIIO FW3の開発計画が年初に発表された際にはFW5が比較的、高価格となってしまっていることから、ドライバー構成をシングルダイナミックドライバーに変更することで低価格のTWSを実現するとしていました。まさにスペックはその計画の通り、FW5と同じLDAC/aptX adaptiveへの対応や左右独立でDAC搭載というスペックを維持しながら、ドライバー構成のみの違いで、日本円ベースで7,000〜10,000円近く安くなっています。ただし1万円を超えてきていることから、昨今の高騰気味のハイスペックTWSに比べればリーズナブルですが、低価格とまでは言えないかもしれません。
製品概要(Overview)
下記にFIIO中国の製品概要を日本語訳した内容を掲載しています。FIIO FW3の特徴は繰り返しになりますが、FW5とほぼ同等のスペックを持っていることです。細かく言えばマイク性能はダウングレードしているものの、BTチップやDACチップなど音質に係る部分はドライバー構成を除いて同じです。そのためFiiO FW3はハイエンド同様のスペックが、1.5万円というリーズナブルな価格で実現した製品とも言えます。
FiiO FW3とFW5の比較
製品名 | FIIO FW3 | FIIO FW5 |
ドライバー構成 | 1 DD(カーボンベース) | 1 DD+2 BA |
DACチップ | AK4332 | AK4332 |
Bluetoothチップ | QCC5141 | QCC5141 |
BTバージョン | 5.2 | 5.2 |
対応コーデック | SBC/AAC/aptx/ aptx Adaptive/LHDC *新ファームでLDAC対応 *日本版は購入時から新ファーム | SBC/AAC/aptx/ aptx Adaptive/LHDC *新ファームでLDAC対応 |
再生時間 | 本体7時間+ケース14時間 | 本体7時間+ケース14時間 |
その他 | ゲーミングモード搭載 | – |
*ダイナミックドライバーはFW3とFW5でサイズは10mmと同じですが、素材は異なるものが使われています。
*細かな点でFW3のマイク性能はFW5に対してダウングレードしているようです。FW3ではCVCキャンセリングのマイクがシングル、マイクにはエレクトレット型を使っています。
主な特徴は次のとおりです(FIIO中国から引用)。
同価格帯にはない音質の追求
FIIO FW3は、同価格帯ではほとんど見られないHiFi TWSです。独立したDAC、プロフェッショナルにチューニングされた音響設計、ハイエンドのBluetoothチップを一つにまとめたことで、高品質なデータ変換、伝送、音響性能によって、ユーザーは高音質な音楽を楽しむことができます。
マスターレベルの音質が楽しめる
FIIO FW3はAKMのAK4332を搭載し、S/N比で106dB、歪み率-96dB、ダイナミックレンジは102dBを持つ高性能チップです。(このデータはFW3をテストしたもの)
Snapdragon Sound認証取得
ハイエンドのデュアルDSP、デュアルコアCPUのQCC5141チップを搭載したことで、FIIO FW3は安定したBluetoothオーディオと全般的な機能を特徴としています。またFIIO FW3はSnapdragon Sound認証を取得しています。
ゲーミングモードを搭載
FIIO FW3は、FiiO Music APPから低遅延のゲーミングモードを設定することができます。このゲーミングモードでは、遅延を100ms以下まで低減し、ゲーム中のあらゆるアクションに素早く反応し、ターゲットの位置を瞬時に捉えることができます。また超低遅延のBluetooth伝送により、映画鑑賞の際にもディテールまで捉えることができ、映画に没頭することができます。
同梱物
FIIO FW3同梱物は次のとおりです。
- FW3本体
- USB A to Cの充電ケーブル *ホワイト版はケーブルもホワイト
- イヤーピース2種(HS18とHS19のうちVocalタイプに近い)
- 説明書
外観と装着感レビュー
FIIO FW3の外観で、まずケースからです。
この画像はFIIO FW3とFW5のケース比較で、FIIO FW3のケースはFW5より一回り大きいサイズとなり、上蓋にはロゴが入っています。ケースだけで重さを測るとFW3が44g、FW5が43gと大きくは変わりません。ケースの質感はFW5よりも少しだけ良くなっていますが、あまり期待はしない方が良いです。ロゴが入ったことでデザインは良いです。
次にFIIO FW3の装着感です。
同じようにFIIO FW3をFW5と比較した画像ですが、大きさはおそらく同じです。重さは片側当たりで、FW3が6g、FW5が6.5gとなっています。このように外観も重さもほぼ変わらないため、ドライバー構成はFIIO FW3が1DDで、FW5が1DD+2BAと異なりますが、FW3とFW5の装着感は同じです。
FIIO FW3を実際に耳につけた感じとして、比較的TWSの中では大きめでつけている時の圧迫感がありますが、痛みが出るほどではなりません。そのためイヤーピースを耳に密着しやすいものと選ぶことで、ノイキャンはないまでも有線イヤホンのような遮音性を確保することが可能です。ただし、装着した時に耳から飛び出る部分が大きく、耳に付けている時のインパクトは大きいです。この辺りは左右独立でDACチップを搭載していることから、現状では小さくできる限界サイズなのかなという印象です。またFIIO FW3において気を付けるポイントとして、FW5も同じですが、ノズルが比較的、太いタイプです。そのためイヤーピースによっては付けにくかったり、付けれないイヤーピースもありそうです。
最後にイヤホン本体の操作性です。個人的にはタッチ式はあまり好きではないので、FIIO FW3のような物理ボタンのタイプはありがたいです。特にTWSによくある接続し直しするシーンなどで、タッチ式では押せているのかわからないのに比べて、FIIO FW3では物理ボタンで電源のオン/オフをわかりやすくできるのは助かります。誤動作もタッチ式に比べてしにくいと感じています。
サウンドレビュー
試聴環境:コーデックはAAC/iPhone接続 /J-POPを中心に10曲前後/イヤーピースはfinal type E for TWS
ボーカルを引き立たせるサウンドバランス
FIIO FW3のサウンドの主役はボーカルです。サウンドバランスはかまぼこと呼ばれるもので、ボーカルが前に出ているバランスです。特に中高音が明るく感じました。シングルダイナミックドライバーで音のつながりは自然ですが、音の輪郭や階層は比較的曖昧です。低音や高音は控えめでボーカルを邪魔しにくく、ボーカルを補完する空気感として提供します。ただしROCKなどのジャンルで楽器が前に出てくる曲では音の輪郭が曖昧かつ低音も控えめであることから、アタックやキレを感じにくく得意ジャンルではなさそうです。一方で歌モノの曲ではボーカルの歌声を非常にクリアに聴くことができます。私がよく聴く曲の中では「水曜日のカンパネラ」ととても相性が良かったです。またボーカルが暗めのトーンの曲よりも、明るいトーンの曲の方が相性が良いように感じました。
FIIO FW3とFW5の比較
まずFIIO FW3とFW5で大きく違いを感じるのは音の輪郭です。ドライバー構成がFIIO FW3は1DDに対して、FW5が1DD+2BAなので当たり前かもしれませんが、FW5の方がより音の輪郭をはっきりと感じることができ、ROCKなどのジャンルで楽器が前に出るような曲や音数の多い曲でもしっかり聞くことができます。一方でこのハキハキとしたサウンドにより、Bluetooth接続特有の音の粗を感じて、高音が刺さると感じる人やシャリシャリと感じる人もいるかもしれません。その点でFW3はボーカルに特化していることで、得意な範囲は狭いながら、Bluetooth接続特有のサウンドの弱点を感じにくいです。この点でもFIIO FW3は、1.5万円というリーズナブルな価格で手軽に音質特化のTWSを楽しみやすいチューニングになっていると思います。FW3よりも輪郭のはっきりとしたサウンドや濃厚なサウンドを楽しみたい方はドライバー構成でよりハイスペックなFW5を選択すると良いと思います。一方で、歌モノやACGジャンルの曲を中心に聴く方やTWSではそこまでの解像度・濃厚さを求めないという方はFW3が適していると思います。サウンドバランスもFW3はかまぼこに対して、FW5はV字型です。またFW3もFW5もFIIOらしく色付けは少ないサウンドです。
LDAC接続について
現在、FW5ではLDAC対応となるベータ版ファームウェアが公開されています。FIIO FW3は購入時からLDAC対応のファームウェアバージョンとなっていました。FIIO公式から説明があるとおり、まだテスト段階であるため、接続機器との相性により接続が途切れたり、ノイズが発生したりする可能性があることを前提にコメントします。まずM11Sとの組み合わせでは難しかったです。最も安定したのはXperia ACE Ⅲでした。私はFIIO機器をLDAC接続するときはよくACE Ⅲを利用しますが、今回のFIIO FW3も比較的安定した接続が可能でした。それでも外や自宅内でも電波干渉が大きいような位置では途切れることがありました。そのため満員電車などは難しいと思います。散歩や自宅でゆっくり聴く分には接続相性の良い機器であればLDACを楽しむことができると思います。
▼その他のFIIO製品レビュー記事へのリンク
FIIO製品レビュー記事一覧
FIIO FW3 周波数特性(Frequency Responce)
FW3(赤色) : FW5(青色)
EARL(ライフスタイルDX)
*X(Twitter)アカウントへのリンク