目次
この記事ではおすすめのカセットプレーヤーを紹介していきます。今回、おすすめのカセットプレーヤーを選定にあたり、比較したカセットプレーヤーは現在、新品で購入できる次の3機種です。
- 「AUREX(東芝) AX-W10」
- 「we are rewind」
- 「FIIO CP13」
カセットプレーヤーの比較表
まず評価および機能などの比較表です。評価は3項目で「音質」、「機能」、「ポータブル性」を⚪︎、△、×の3段階で相対評価をしています。それ以下は主な仕様です。
ブランド | FIIO | AUREX(東芝) | we are rewind |
モデル | CP13 | AX-W10 | we are rewind |
音質 | ◎ | × | △ |
機能 | × | ⚪︎ | ⚪︎ |
ポータブル性 | ⚪︎ | ◎ | × |
サイズ (ボタン含めず) | 横12cm 高8.4cm 幅3.1cm | 横12cm 高8.8cm 幅3.3cm | 横14cm 高8.7cm 幅3.2cm |
重量 | 316g | 245g | 407g |
原産国 | 中国製 | 中国製 | 中国製 |
オートストップ | あり | あり | あり |
録音 | なし | あり | あり |
Bluetooth | なし | あり | あり |
オートリバース | なし | なし | なし |
ノイズリダクション | なし | なし | なし |
その他 | ー | ー | サラウンド機能 あり |
カセットプレーヤー/テープの現在について
個別のカセットプレーヤー評価に入る前に当ブログで調べた現在のカセットプレーヤー/テープの事情についてお話したいと思います。なぜならこの事情はこの後の音質や機能のレビューにもつながる話題だからです。繰り返しになりますが、カセットプレーヤー全盛期の時代を私自身は経験していないため、ネットや書籍などで調べたことに対する主観的な印象も含まれている点を予めご了承ください。
当時のカセットプレーヤーの高品質・高機能な部品は生産されていない
1980−90年代のカセットプレーヤー/カセットデッキには現在販売されているものに比べて、高品質な部品、高機能なICが搭載されていました。当時の主な機能として①オートリバース、②ドルビー社のノイズリダクションがあります。この二つは便利でありながらも、現在はこれらの機能向けの部品やICがほとんど生産されていません。そのため当然ながら「AUREX AX-W10」、「we are rewind」、「FIIO CP13」のいずれにも①、②の機能は搭載されていません。さらに言えば現在も生産されているダブルヘッドデッキ TEAC W-1200にも搭載されていません。また当時の高品質な部品やICがないことで、「AUREX AX-W10」、「we are rewind」において録音機能が低品質であることの原因になっているとも言えます。また3機種の機能が当時に比べて少ない理由にもなります。
高品質なカセットテープも生産されていない
次にカセットテープです。現在、家電量販店などで手に入るカセットテープはmaxell(マクセル)の「UR」というモデルのみです。しかし、カセットテープが主流だった当時では、Type1(ノーマル)、Type2(ハイポジション)、Type4(メタル)という3種類のテープがありました(Type1<Type2<Type4の順で高品質)。さらにType1、Type2、Type4の中でも細かくグレードが分かれていました。現在も販売されているmaxell「UR」は当時で言えばType1の一番下のグレードとなります。一番下だからといって品質が悪いとはならないものの、当時はもっと高品質なカセットテープがあったのも事実です。そして、当時のオーディオ好きの人たちは、その高品質なカセットテープをメインに使用していたようです。つまり、現代では録音機能が低品質であることに加えて、録音するカセットテープもまた当時に比べると低品質となってしまっています。
音質や機能が低品質になったのは時代の流れによるもの
カセットテープは主にCDの登場、さらに言えばCDはストリーミングサービスによって淘汰され、CDは現在も多くの販売がありますが、カセットテープは非常に少ないです。カセットテープが音楽メディアとして主流でなくなったことによって、多くのカセットプレーヤー/カセットテープの生産・研究開発が止まり、サプライチェーンも途絶えたことで、最低限の用途・要件のみを満たすカセットプレーヤーだけとなったのは時代の流れによるものといえます。また現在もソニーなど当時のカセットプレーヤーが中古でリセールされていることがあります。しかしこれらの多くはメンテナンスが必須で、壊れてしまうと修理部品、修理屋を探すのも困難です。また修理されたものも、当時のカセットプレーヤーの部品やICの生産がないので、新しい/同じ部品ではない互換品が使われている可能性が高いと見られます。そのため当時の音質であるかは定かではありません。最近ではカセットテープで新譜も少ないながら出ていて、レコードほどでないものの、復刻してきています。しかし、レコードと異なりオーディオメーカーの参入はなく、前述の通り、カセットプレーヤーにはサプライチェーンの都合で、最低限の用途・要件を満たすだけの低品質な部品、ICを使わざるを得ないために音質を重視したモデルはこれまでありませんでした。
この後のレビューにおいて、音質が劣るという表現を使いますが、これは現在のオーティオ機器ではほぼないことです。それは一部を除けばエントリークラスでもレベルが非常に高く、その音質差は好みの範囲とも言えるからです。一方で、カセットプレーヤーにおいてはすでにサプライチェーンが途絶えているため、黎明期に戻ったような状態であり、音質の良し悪しが明らかに出ています。
カセットプレーヤーで音質重視を謳ったFIIO CP13の登場
このような中、FIIO CP13がついに音質重視を謳っています。FIIOは中国のオーディオ専業メーカーです。ポータブルオーディオを中心に高い評価を得ている製品がたくさんあります。最近ではBTR7やK7、R7といったモデルが有名です。FIIO CP13の詳しい製品概要は下記のリンク記事をご覧ください。簡単にいえば内部設計はFIIO独自にカスタマイズしたもので、音質に重要なヘッドやフライホイール、電池は度重なる試作を繰り返して選定・カスタマイズされたものとなっています。またオペアンプは、当時のカセットプレーヤーらしさを損なわないモデルが使われています。つまり、新たにサプライチェーンを作り直し挑んだ意欲作となっています。
FIIO CP13最新情報 〜音質を重視したカセットプレーヤーの復活
FIIO CP13はFIIO初のカセットテーププレーヤーです。外観はSonyの往年の人気製品を意識し...
また今回は音質を重視するため、再生に専念し、録音やBluetoothといった機能はあえて付けられていません。また前述の通り、録音機能においては当時の高品質な部品/ICがなければ、高音質な録音の実現はハードルが高いことから今回のモデルには搭載されなかったようです。また安定した再生を担保するために再生以外の機能を省いたという背景もあるようです。Bluetooth機能においては現代の技術であることから搭載のハードルは低くく、今後の売れ行き次第で新たなモデルが開発されれば対応する可能性があります。なお、このFIIO CP13であっても、当時のミドル/ハイエンドのカセットプレーヤーの性能には達していないことも認識しておく必要があります。一方でエントリークラスの再生性能は達成できているようです。ただし、新品で手に入ることやメンテナンスも可能であることを鑑みれば、当時の製品の中古よりも優位性は高いかもしれません。
カセットプレーヤーの比較レビュー
ここではVaundyの新譜カセットテープ「replica」/デジタル音源を録音したテープ、イントラコンカイヤホンFIIO FF3Sを使用した比較レビューです。
AUREX(東芝) AX-W10 レビュー
機能・ポータブル性は高いが、音質は劣る
上の画像はAUREXのカセットプレーヤーAX-W10シリーズのクリアカラーのモデル(AX-W10C)です。まず外観で、クリアカラーモデルは、カセットテープを入れるとまさに流行的なレトロデザインです。重さも今回比較する3機種の中で最も軽くポータブル性が高いです。また機能面でもBluetooth、録音も搭載されていて、汎用性の高いモデルとなっています。一方でボタンが並行に配置されていない、フタがずれやすいといった低品質な設計も見られます。
音質面では3機種の中でも最も劣っているといえます。なぜなら音質以前に左右の音量レベルが異なるからです。私の買った製品では音が右に偏っていて、ボーカルが常に右側に寄って聞こえます。またノイズ感が3機種の中では最も強く、さらにシャカシャカとした音の傾向もあり、安物のラジカセを聞いているような印象です。音をこもらないように中高音〜高音域をもち上げた調整をかけた印象です。そのため音楽を聴くにはあまりおすすめできません。他方で、3機種の中では価格が最も安く1万円以下です。そのため懐かしさを楽しむ製品としては価格、汎用性で優れています。
we are rewind レビュー
機能性は高く、音質はそこそこ
we are rewindはフランスの会社がデザイン・設計したカセットプレーヤーです。一方で中国製のため見える範囲の内部はAUREXと構造が似ています。デザインはAUREXよりも高級感のある金属製の本体が特徴で、設計上の低品質な点は見当たりません。一方で本体重量は400gを超えていて、大きさもそこそこ存在感があるためボータブル性は低いです。
機能面ではAUREXと同じく、録音とBluetoothが付いています。しかしながら、このwe are rewindで録音したテープは音量が波打っていて安定していません。ボーカルの声が遠くなったり、近づいたりしてます。そのため録音機能は最低限のものと理解したほうが良いです。
次に音質面では、構造がAUREXと似ていたもののこちらはもう少し落ち着いたサウンドです。正直なところ、FIIO CP13を聴くまでは、カセットテープにしては音が良いなと感じていました。というのも、we are rewindの再生音はTWSや小型DACに比べてやや音がこもっていて、ノイズフロアが高いものの、当初はAUREXのようなシャカシャカとした音のイメージをカセットテープに抱いていたので、そのイメージに比べると落ち着いているサウンドバランスで、音がよく感じていました。ただ、ノイズフロアが高いので、イントラコンカイヤホンであればそこまで気になりませんが、カナル型のイヤホンを使用するとノイズが結構気になります。
FIIO CP13 レビュー
機能は再生のみだが、音質は最も優秀で現代のポータブルオーディオにも魅力は劣らない
FIIO CP13の大きさや重さはAUREXに近く、金属製の本体はwe are rewindに近いです。そのためボータブル性と外観の高級感はそれぞれの良いところ取りをしたような印象です。一方で機能面では、再生以外はないため、録音やBluetooth接続はできません。また再生のみですが、we are rewindとほぼ同価格の2万円程度となっています。
次に音質面です。FIIO CP13はとてもクリアな音質が特徴です。このクリアとはノイズ感が少ないことはもちろん、低音や高音にも嫌な強調はありません。私はFIIO CP13のクリアな音質を聴いた時、カセットテープのイメージが覆りました。決してこもったり、シャカシャカしたりすることなく、それでいて、カセットテープ特有の柔らかく響く低音の感じやアナログっぽい音の印象もあります。シンプルにオーディオ機器の選択肢の一つとして楽しむことができます。さらにカセットデッキを使ってデジタル音源を録音したカセットテープでは、カナル型イヤホンで聴いてもノイズを感じにくいです。また当時の高品質のテープを使うことでさらにノイズ感も少なく、ダイナミックレンジも広い音になりました。
実際の再生音源比較動画
カセットプレーヤーのおすすめはFIIO CP13
比較レビューの通り、当ブログでのカセットプレーヤーのおすすめは「FIIO CP13」です。理由は音質です。カセットテープ本来の魅力を引き出し、単なる懐かしいカセットプレーヤーとしてではなく、音楽を聴くオーディオ機器の一つとして楽しむことができるからです。一方で、Bluetoothが必須の場合、予算があって大きさが気にならなければ「we are rewind」がおすすめです。前述の比較レビューの通り、音質面ではAUREXよりも優れているからです。録音についてはいずれの機種もあまりおすすめができません。いずれにしてもできれば有線イヤホンで「FIIO CP13」を楽しんでいただきたいです。
有線イヤホンではFIIO FF1という使い勝手も良く、オーディオ向けとしてはリーズナブルなイントラコンカイヤホンがありますので合わせてご検討ください。
FIIO CP13(カセットプレーヤー) Amazon / eイヤホン
FIIO FF1(イントラコンカイヤホン) Amazon / eイヤホン
カセットテープの種類と再生について
カセットテープの種類と注意点
前述した通り、カセットテープにはType1(ノーマル)、Type2(ハイポジション)、Type4(メタル)という種類(厳密にはType3もある)があります。そしてこれらテープの種類によって音の特性が異なります。そのた1980−90年代当時のカセットプレーヤーにはテープの種類に合わせた再生を行う機能が搭載されているのが一般的でした。特に「Type1(ノーマル)」と「Type2(ハイポジション)/Type4(メタル)」で異なります。今回ご紹介した3機種は全てそのテープ特性に合わせた再生を行う機能がありません。そのため、厳密にはType1(ノーマル)のみ対応となります。一方でFIIO CP13ではType2(ハイポジション)、Type4(メタル)も再生できるとしています。しかし、Type1(ノーマル)の特性に合わせた一定の再生設定が常に適用されるため、他の機種同様、Type2(ハイポジション)、Type4(メタル)を再生したときに「高音域が強調されて聞こえる(高音がキンキンとする感じ)」場合があります。またType4(メタル)対応ではないため、カセットプレーヤーにとって重要なヘッドが大きく摩耗するリスクがあります。
FIIO CP13でType1(ノーマル)、Type2(ハイポジション)、Type4(メタル)を再生
上の画像は当時のテープをフリマサイトで購入して試したものです。現在も色々なテープを購入し、継続して試しています。現状であくまで個人的な感想としては、FIIO CP13で聴く場合にはType1(ノーマル)、Type2(ハイポジション)、Type4(メタル)は気にするほどの音の違和感はないということです。様々なイヤホンで確認したところ、一部の高音域の再生に長けているイヤホンに限って、高音域の強調を感じることができました。しかしイントラコンカであれば違和感がなく、また中低音寄りやフラットなバランスであればカナル型でも違和感を感じにくいです。それよりも高品質なテープによるノイズの少なさやダイナミックレンジの広がりを感じることのできるメリットが大きいです。
FIIO CP13と相性の良いカセットテープはmaxell
また別の観点で、カセットプレーヤーにテープセレクター機能がなかった当時は、カセットプレーヤーと相性の良いテープを見つけることも楽しみの一つだったようです。色々なメーカー、種類を試した結果、maxellのカセットテープとFIIO CP13は相性の良い傾向があるように感じています。現時点でmaxellの中では、UDⅡ、XL1、URを試しましたが、XL1が最も良かったです。今後、フリマサイトで安く手に入りやすく、相性の良いテープが見つかりましたら、また追記していきたいと思います。
昔の(ブランク)カセットテープ購入の注意点
現状ではmaxellのURは市販されているため最も安く手に入ります。1980−90年代当時のカセットテープは転売価格でプレミアがついていますので、URはコストパフォーマンスが高いです。仮に当時のカセットテープを試したい場合、一部のプレミアモデルを除けば1000円以上のテープを選ぶ必要はないです。より高品質のカセットテープを試したいという場合でも1500円までで買えるテープで十分という印象です。間違っても録音に使うだけであれば、1500円以上は買わないようにしましょう。また1989-1993年代のカセットテープがおすすめです。またはmaxellのUD、AXIAのK1あたりであれば1993年よりも新しくてもそこそこ良い印象です。なお、テープを購入する際は、ご自身のラジカセ/カセットデッキの対応するカセットテープの種類を確認しておく必要があります。現在新品で手に入る製品はType1のみ対応がほとんどだからです。
番外編:タワーレコードで販売されているカセットプレーヤーについて
カセットプレーヤーを探していると「we are rewind」とこのタワレコで販売されているブランド不明のカセットプレーヤーにも出会うと思います。結論から言えば、このカセットテープはおすすめできません。なぜなら再生が安定していないからです。購入当初から一部のテープでは早送り再生のようになってしまうからです。さらに私は購入して3−5回ほど使用したあとは、全てのテープで早送りのような再生になってしまいました。このカセットプレーヤーはAmazonでも似たような製品が3000円ほどで販売されています。そのため安価だからといって購入してしまうと故障した時に別の機種を買わざるを得なくなり、かえって損する可能性もありますのでご注意ください。
FIIO CP13の再生速度が速いときは
カセットプレーヤーでは再生速度が必ずしも正しいとは限りません。カセットプレーヤーとカセットテープの組み合わせによって再生速度が早かったり、遅かったりする場合があります。そのためカセットプレーヤーには再生速度調整用のネジがあります。FIIO CP13では下の画像内の赤丸で囲っているのが調整ネジで、右回りに画像のように回したところ、私の場合は原曲と同じ速度になりました。ただし、必ずしも全てのカセットテープ再生において正しい速度になるとは限りませんので、自己責任にて調整してください。
EARL(ライフスタイルDX)
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