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FIIO FA19が2024年4月に中国で発売されました。1ヶ月ほど使用してきましたのでレビューをしていきたいと思います。日本では2024年6月14日発売となります。
FIIO FA19とは
FIIO FA19はFIIOのフルBA型イヤホンのフラグシップモデルです。前世代はFIIO FA9というモデルで6基のBAを搭載していました。そして今回4年ぶりの更新となり、搭載するBAは10基に増加しました。BAは引き続きKnowles製を使用していますが、採用するドライバーはFA9とは異なるものとなっています。
詳細な製品概要とFA9との比較表は「FIIO FA19最新情報 ~4年ぶりのフラグシップBA型イヤホン」の記事でまとめていますのでご覧ください。
FIIO FA19最新情報 〜4年ぶりのフラグシップBA型イヤホン
FIIO FA19は10基のBAを搭載するFIIOのフラグシップイヤホンで、2020年に発売されたFA9の後継機です。FIIOのイヤホンの中ではフルBA型イヤホンのラインナップは少なく、実際にFA9の販売終了以降はフルBA型のイヤホンの発売はありませんでした。そして今回、FIIO FA19の発売によ...
FIIO FA19の販売情報
発売日:2024年6月14日(中国:4月26日) 価格:¥187,000(999ドル)
販売ページ:Amazon / eイヤホン / Aliexpress
FIIO FA19は中国で2024年4月26日に発売されました。日本では6月14日に発売となり、価格は約19万円と海外価格に比べてやや割高な価格設定となりました。しかし、Knowles製のBAで構成されていて、サウンド面も20万円クラスに遜色なく十分に価値のある水準となっています。ただイヤホンに限って言えば、自己責任になりますが、3万円の価格差があるなら海外から買うのも一つの選択肢とは言えます。
FIIO FA19の付属品
FIIO公式に掲載している付属品の一覧です。これまでのFH9やFD7といったフラグシップモデルと同じ付属品となっています。ケーブルをはじめとして、イヤピースはFIIO HS19(5)、HS18(12)、Spinfit(11)の3種が付いてきます。またMMCXリムーバー(8)やケーブルクリップ(6)、イヤホンケース(3)といった非売品のアクセリーも付いてくるのは嬉しいポイントです。
FIIO FA19のデザイン、装着感のレビュー
※上の画像は付属ケーブルからLC-RE Proに変えています。
FIIO FA19のフェイスプレートのデザインは幾何学模様となっています。ハウジングのボディ部分はスモークのかかった樹脂で、中のドライバーが透けて見えるデザインです。また写真では伝わりにくいですが、イヤホンのサイズは10基搭載されているイヤホンの中ではかなり小さいです。またFIIO FA19の片側当たりの重さは約7gと軽量です。そのためドライバー数の多いハイエンドのイヤホンの中では大きく、重いハウジングをしていないので、装着感のハードルはとても低いです。またこれまでのFIIOのフラグシップイヤホンFH9やFD7はセミオープンでしたが、FA19は密閉型となっていますので遮音性も高く、音漏れを気にする必要はありません。
FIIO FA19 サウンドレビュー
イヤーピース:HS18/ケーブル:付属のケーブル/K19/曲は『ずっと真夜中でいいのに。』を中心に3曲程度
Pros/Cons
Pros
- 高い解像度
- 正確なサウンド表現
- (スイッチON)低音はさらに高い解像度
Cons
- 高音の刺激が強い
- フロントエンドに左右されやすい
総括
FIIO FA19はスイッチ機構が付いています。この総括ではスイッチOFFを基本として、スイッチONについてもレビューします。
FIIO FA19の特長はレスポンスです。音の減衰が適切で、残響感の味付けがありません。これにより一つ、一つの音をはっきりと聴き取ることができます。これにより普段、聴いている曲でもFA19を使って聴けば、気づかなかった楽器の表現や歪みを聞き取ることができるかもしれません。サウンドスタイルは冷たく(乾いていて)、固めです。サウンドバランスは低音から高音まで概ね同じ強さで聴こえますが、強いて言えば溝の限りなく浅いU字型と言えます。抽象的な表現をすると機械的なサウンドというイメージです。曲をとにかく忠実に鳴らすといった印象です。
一方で、この正確無比なサウンドスタイルは、雰囲気や空気感が大切になるようなバラードなどのジャンルとの相性は良くありません。また音の解像度が高く、残響感が少ないため、特に高音では伸びがなく、それが音の詰まりに感じる場合もあります。
そのためとにかく正確に、忠実に曲を聴きたいならFIIO FA19を選ぶことは間違いありませんが、解像度や正確性というスキルポイントに振り切ったサウンドスタイルなので、好みは分かれそうです。また一つ、一つに音が粒立つこの解像度の高さは人によって音が尖っているように聞こえるかもしれません。また特に高音ではその刺激で苦手な人もいるかもしれません。さらにフロントエンドとなるDACの性能も一定以上の解像度が要求される印象です。解像度が高いために、例えばBluetooth接続をした時に圧縮された音源データの粗を感じすぎてしまいます。
最後にスイッチをONにした時には低音がさらに聴き取りやすくなります。サウンドバランスに大きな変化を感じることはありませんが、高音の刺激がやや抑えられ、その反対に低音を聴き取りやすくなります。これによりFA19が持つ解像度の高さを低音にフォーカスできることで深く潜ることができるようになり、低音の見通しがとても良くなります。この変化により、やや暖色的なサウンドにも感じることができます。また感情のない機械的なサウンドは抑えられ、グルーヴ感も出てきます。音楽のエモーショナルな部分を楽しみたい場合はスイッチをONにして聴くのをお勧めします。簡単に言えば、リスニングよりのサウンドスタイルに変化すると言えます。
他のFIIOイヤホンとの比較
FIIOのFA19はFIIOのフラグシップラインとなるので、同じラインにある上の画像左からFD7、FH9、(FA19)、FA9、FX15を比較してきます。なお、比較のためにやや極端な表現を使う場合があります。またそれぞれはドライバーの構成が異なるので、本来は単純な横比較はできないかもしれません。
FA9との比較
FA9は前世代の機種です。この比較ではFA19、FA9ともにスイッチは全てOFFにしています。また前提情報として、FA9は6BA、FA19は10BAとBA数が異なります。その上で、FA19はBA数以上にFA9から大きく進化したように感じました。なぜならFA19の方がより音の一つ、一つの粒が立ち、レスポンスも高くなっているからです。そのため極端にいうとFA19を聴いてから、FA9を聴くと、聴こえてくる音数に物足りなさを感じます。一方でFA9の方が刺激が少なく、レスポンスが落ちるので、より落ち着いて、一つ、一つの音を聴き取ることができます。またゆったりとした曲との相性も極端に悪くなりません。
仮にFA9をすでに持っている人はFA9を手放してFA19へ代替えを行う価値があります。これにより、さらにハイエンドらしくなったFIIOイヤホンを楽しむことができます。ただFA19の性能が大きく上昇したことで、FA9、FA19はもはや別物で、それぞれを持っていても味の違いを楽しむことはできます。
FH9との比較
FH9は1DD+6BAのハイブリッド型イヤホンです。FH9の特徴のセミオープン型のチタンシェルを持つこともあり、FA19と比較して音場が広くなります。さらに音のつながりはよりナチュラルです。FH9は開放的で残響感が程よくあることで、音楽の雰囲気をより楽しみやすいです。そのためFA19と比較して、FH9のサウンドは万能で、どのジャンルの曲と合わせても高いパフォーマンスが期待できます。そしてチタンシェルのおかげで、管楽器やピアノの響きがより綺麗に聴こえます。
ただし、FA19のスイッチをONにすることで、FH9と似たようなパフォーマンスを発揮します。開放的でナチュラルというFH9のスタイルとは異なりますが、FA19のスイッチをONにしてリスニング寄りのサウンドスタイルとなることで、FH9同様にオールマイティなパフォーマンスを持ちます。これはあくまで想像の域は出ませんが、FA19をセミオープン型にして、金属シェルにしたらFH9と似たサウンドになるのかもしれません。この観点でFA19はFH9の成功をしっかり反映させたとも推測できます。
FX15
FX15は1DD+1BA+4ESTの構成で、その特長は高音の表現です。これはどのイヤホンであっても代え難いサウンドになっています。どちらも密閉型の3Dプリントシェルでモニターライクなサウンドの方向性を持つイヤホンになりますが、この二つを比較した時、音の解像度の感じ方が大きく異なります。FA19は粒が立つような解像度を持つのに対して、FX15はきめ細かい泡のような解像度を持ちます。そのため、FX15の方がより滑らかに感じることができますが、音の一つ一つを捉えやすいのはFA19です。個人的には今回比較する中ではFX15が最も好きな個性を持つイヤホンです。高音域の表現は泡が綺麗に作られたビールの一口目の口当たりのように滑らかさと程よい泡のシュワシュワを感じるサウンドです。
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FD7
最後にFD7との比較です。FD7はシングルDDの構成で、DDにはピュアベリリウムを採用しています。FD7の特長はとにかくボーカルの表現です。女性ボーカルに特化したイヤホンを探しているなら、FD7以外の選択はありません。ただ現在は廃番となっているため新品在庫が無くなった場合、中古でしか手に入らなくなりますのでご注意ください。FA19との比較では最も遠い存在です。これはFD7もレスポンスが良く、平均以上の解像度を持っていますが、中音〜高音にかけては非常に艶やかな残響感を持っていて、冷たい音ながらボーカルの息遣いも感じるほどの生々しさがあり、FA19のようなモニターライクなタイプとは全く異なります。
比較の結論
- 寒色タイプが苦手で、暖色、万能なタイプを好む場合はFH9
- 寒色タイプが好きで、高い解像度を求めるならFA19
- 低音域の表現より、高音域の表現をより重視するならFX15
- ボーカルにより生々しさなどのパフォーマンスを求めるならFD7
比較した結論としては、FA19は、FAシリーズよりも、FHシリーズやFXシリーズに近づいた傾向を持っている感じました。そのためこれまでFAシリーズを手に取らなかった人もぜひ一度試してみてください。低音に物足りなさを感じる人はスイッチをONにして試聴することをお勧めします。
最後に:リケーブルの提案
FIIO FA19はこれまでのFIIOイヤホンから想像すると、味付けの少なさは共通しているものの、ナチュラルさよりも解像度や正確性に極振りした、ある種、好きな人に刺されば良いというハイエンドイヤホンらしい尖ったサウンドスタイルになっています。全ての帯域で高い解像度のパフォーマンスを発揮できるポテンシャルを持つことから、リケーブルによる変化で好みのサウンドへの変化を期待できるイヤホンとなっていそうです。私もFIIOから発売されているLC-RE Pro2022やLC-RC2024をしばらく試してみる予定です。
私のレビューは以上です。
その他Weiboのレビュー情報
中国WeiboではFIIO製品のレビューは活発です。ここでは有名レビュワーの記事へのリンクを掲載します。
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