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FIIO K11の実機レビューです。FIIO K11は中国で9月末に発売され、早速購入し、入手できましたのでレビューをしていきます。今回ゲーム用途での利用も想定された製品となっていますので、そのあたりも確認していきます。ぜひ最後までご覧ください。日本でも11月3日に発売開始です。
FIIO K11 レビュー総括(Summary)
FIIO K11のシルバーモデルの外観はMac miniを彷彿とさせるデザインです。シンプルで洗練された外観を持っています。さらに本体のRGB設定の選択肢が豊富です。明るさは消灯と合わせて5段階、カラーは0~8の9種類、点灯パターンは点滅/常時点灯の中から選ぶことができます。この充実した設定により、個人のデスクに合わせたRGB設定にできます。そしてディスプレイが搭載されたことで、これらの操作性が格段にアップしています。またアプリなしでもすべての設定にアクセスでき、入力やゲイン、PO/LOの切り替えから、デジタルフィルター、UAC、ディスプレイの明るさ、RGB、アップデート、ファームウェア情報の設定または確認が可能です。そのためPS5/Switchとも接続して使いやすいモデルとなっています。
FIIO K11のサウンドの特徴は明るく、キラキラとした中高音〜高音です。ボーカルが気持ちよく、ピアノ、エレキギター、管楽器の響きが綺麗です。サウンドバランスは中高音(ボーカル)が前に出ていて、中高音寄りです。同じFIIO製品だとKA5のサウンドに近い傾向です。ただし、KA5では低音が控えめでしたが、FIIO K11でも低音は前に出ないながらも、デスクトップ型の駆動力によって必要な量を感じることができます。また駆動力はあるので低音寄りのイヤホン/ヘッドホンでは低音がしっかりと前に出てきます。低音の印象は硬めで弾力がないためにやや浅く感じます。そのためイヤホン/ヘッドホンによっては平面的に聴こえる可能性があります。この点はKA5やQ11でもあった弱点でシーラスロジック社のDACチップの傾向になるかもしれません。一方で硬めの低音はレスポンスが良く、ドラムのリズムが速い曲でも音の立ち上がり、キレが良いです。そのためボーカル主体のサウンドバランスながらPOPS曲だけでなく、ROCKなどとの相性も悪くないです。ただ相性が良い曲はPOPSです。
Pros
- ディスプレイにより現在のステータスがわかりやすい
- 操作性も向上している
- 本体のみですべての設定が可能
- キラキラとした中高音〜高音
- レスポンスの良い低音
Cons
- やや平面的に聞こえる場面も
- 相対的に音場が少し狭いか
- PS5/Switchとも組み合わせしやすい
FIIO K11の開封動画
FIIO K11 発売日・価格
発売日:2023年11月3日(中国9月27日) / 価格:23,650円前後(899元/129ドル)
FIIO K11はK5 PRO ESSの後継機です。2桁の型番は新しいネーミングルールが適用されいて、K5の後継機ながら、「1」のグレードに位置するエントリークラスのデスクトップ型DACアンプとなります。そのため今後上位機種としてK3やK5の型番を持つ次世代機が予定されているかもしれませんね(あくまで予想です)。そして価格は円換算で約2万円と比較的安価なモデルとなっていて、エントリークラスのデスクトップ型DACアンプとしては競合の多い価格帯です。日本価格は昨年のK7の実績から5,000円程度上乗せされるようですので、2.5万円前後と予想しています。(追加情報)日本の発売が11月3日に決まり、価格は予想よりも少し安く23,650円となりました。
特徴
ここでは特徴を箇条書きで記載しますので詳細はFIIO K11の紹介記事をご覧ください。
- DACチップはCS43198
- 出力は6.35/4.4mmのPOとRCAのLO
- 入力はUSB(タイプC)/同軸/角型デジタル
- 1.1インチのVAディスプレイ
- マルチファンクションノブにより本体から設定が可能
- Windows 10以降ではドライバー不要、SwitchとPS5にも対応
- 豊富なRGB設定
スペック
FIIO K11とK5 PRO ESSのスペック比較表です。K11はバランス接続が可能となったことで、バランス接続時の最大出力値はK5並みであるものの、6.35mmのアンバランス接続の最大出力値がダウンしました。加えて、RCA入力によるLINE INの機能がなくなりました。その他のスペックはK5 PROから概ね改良されていて、さらに外観のデザインやDACチップ/USBコントールチップなどはリニューアルされています。またエントリークラスでもUSB接続がタイプC端子となったのは地味に嬉しいポイントですね。
製品名 | K11 | K5 PRO ESS |
カラー | ブラック、シルバー | ブラック |
DACチップ | CS43198(シングル) | ES9038Q2M(シングル) |
マスターチップ | gd32f303ret6 | NA |
USBコントロール | NA | XMOS XU208 |
ディスプレイ | 1.1インチVA | なし |
サイズ | 横幅147*奥行133 *高さ32.3mm | 120*146.5 *155mm |
重量 | 約407g | 約408g |
サポート | 384kHz-32bit/DSD256 (USB DAC) | 768kHz-32bit/DSD512 (USB DAC) |
出力 | 6.35mm/4.4mm/RCA | 6.35mm/RCA |
最大出力(SE) | 520mW(32Ω) | 1250mW(32Ω) *ライン入力時1500mW |
最大出力(BAL) | 1400mW(32Ω) | なし |
THD+N | <1%(SE/BAL-32Ω) | <0.0009%(SE-32Ω) |
S/N | ≧123dB | ≧118dB |
出力インピーダンス | <1.2Ω(SE-32Ω) <2.4Ω(BAL-32Ω) | <1.2Ω(SE-32Ω) |
入力 | USB(タイプC)/同軸/光(角型) | USB(タイプB)/同軸/光(角型)/ライン |
電源 | DC12V/2A | DC15V/1.5A |
K11の付属品について
FIIO K11の同梱物は次のとおりです。
- 本体
- 3.5 to 6.35変換アダプター(写真から漏れています)
- USB A to C
- ACアダプター(ミッキー型)
- 電源ケーブル
- 説明書
K11に付属のUSBケーブルはA to Cのケーブルですので、C to Cで接続する場合は追加で購入する必要があります。とはいえ、データ通信が可能なケーブルであれば使用できますので、PS5やPCに使用しているケーブルをそのまま使うことも可能です。
設定の解説
FIIO K11の設定について
操作や設定方法は動画も作成しました。
FIIO K11では本体からすべての設定にアクセスすることができます。
FIIO K11設定解説
まず電源のON/OFFについてです。電源プラグを挿すと自動で電源がONになります。電源をOFFにしたいときマルチファンクションノブを5秒間長押しします。OFFの状態から電源ONにしたいときはノブを長押し(2秒ほど)です。
そして設定には3つの画面があります。①デフォルト画面、②入力切替画面、③本体設定画面です。そしてこれらの設定を行うにあたり、マルチファンクションノブの基本操作として”回す”、”短く押す”、”長く押す(2秒ほど)”の3種類があります。それぞれへの遷移方法や設定できる内容は次のとおりです。
<デフォルト画面の設定>
スタート時の状態を<デフォルト画面>とし、この状態ではサンプルレートと音量が表示されています。
- 音量調整 > 本体デフォルト画面からマルチファンクションノブを回して調整
<入力切替画面の設定>
スタート時のデフォルト画面から、マルチファンクションノブを短く押すと入力切替の画面に遷移します。
- 入力切替 > ノブを回して切替先をUSB/OPT/COAXから選択し、再度ノブを押すと切り替わります。
<本体設定画面の設定>
スタート時のデフォルト画面から、マルチファンクションノブを長く押すと本体設定画面に遷移します。この画面から本体設定のすべてにアクセスすることが可能です。それぞれの設定までマルチファンクションノブを回し、短く押して設定に移ります。設定状態になると点滅しますので、その状態で再度マルチファンクションノブを回すと設定を選択することができます。最後に変更したい設定で短く押すと設定が確定となります。設定の一覧と内容は次のとおりです。
- GAIN(ゲイン) > H/M/Lの3種類。それぞれHigh、Medium、Lowの頭文字です。
- OUT(出力) > PO/LOの2種類。POは前の6.35/4.4から、LOは後ろのRCAから出力です。どちらも音量調整が可能です。
- FILT(デジタルフィルター) > 1~6までの6種類あります。下記はマニュアルのスクリーンショットです。
- UAC > 1/2の2種類。1はUAC1.0、2はUAC2.0を指します。1に設定するとPS5が認識しました。
- LCD-D(ディスプレイの明るさ) > 1~3の3段階です。
- LCD-T(ディスプレイの持続時間) > 1/2/5/10/30分と0(常時表示)の6種類です。
- RGB-M(ロゴRGBの色) > 0~8の9種類です。0はサンプルレートに従い、1から順に赤、青、シアン、紫、黄、白、緑で、8は色が自動で順番に切り替わります。
- RGB-P(ロゴRGB点灯パターン) > Y/Nの2種類、Yは点滅、Nは常時点灯です。
- RGB-B(ロゴRGB明るさ) > 0は消灯で、1~5の5段階です。
- UPDATE(ファームウェアアップデート) > Y/Nの選択で、Yを選択するとファームウェアアップデートモードに移行します。
- RESET(ファクトリーリセット) > Y/Nの選択で、Yを選択するとファクトリーリセットされます。
- FW Vxxx(ファームウェバージョン表示) > インストールされているファームウェアバージョンが表示されます。
- RETURN(デフォルト画面に戻る) > RETURNが表示された状態でマルチファンクションノブを押すとデフォルト画面に戻ることができます。なお、ノブを長押しすればどの設定からもデフォルト画面に戻れます。
その他留意事項
挙動として気になった留意事項を記載しておきます。特にUAC設定はPCによっては音が出ないことがあるので目を通しておかれると安心です。
FIIO K11とPS5/Switchとの接続について
- FIIO K11とPS5/SwitchはUAC設定を1.0(デフォルトは2.0)に変更し、接続します。
- ただし、UAC1.0設定のままの場合、Mac miniでは音が出ませんでした。加えて本体設定からUAC2.0に変えても音は出ません。UAC1.0からUAC2.0に設定変更したのち、一度電源を入れ直す必要があります。これはUSBを接続し直してもダメでしたので、電源入れ直しが確実です。
- その逆のUAC2.0からUAC1.0に変更し、PS5に接続する場合は電源の入れ直しは不要でした。
FIIO K11の再生関連について
- 3.5mmと4.4mm同時に接続したときは4.4mmが優先されます。
- 再生頭に長めのバッファが差し込まれていて、音楽アプリ/ソフトによっては頭切れを起こす可能性があります。問題ないアプリ/ソフトでは再生ボタンを押してからワンテンポ遅れて再生が始まります。
外観レビュー
K11のデザイン(外観)について
まずFIIO K11の外観(デザイン)です。Mac miniと並べて撮った写真です。
FIIO K11のシルバーモデルは、Mac miniとデザインの親和性が高く、外観はMac miniを小さくしたようなイメージです。本体は梨地でサラサラとした質感となっています。本体上部に「FIIO」とロゴが配置され、これがRGBライトを兼ねています。個人的にはMac miniのデザインが好きなので、FIIO K11のデザインもとても気に入りました。
FIIO K11の本体サイズ 〜コンパクトでモニター台の下にも置きやすい
次にFIIO K11のサイズです。K5PROとほぼ同じ大きさであるK7との比較の写真です。
FIIO K11とK7を比較するとK11がかなりコンパクトなサイズとなったことがわかります。横幅はほぼ同じで、わずかにK11が広いですが、K11の奥行きはK7の2/3、高さは1/2のサイズとなりました。これにより、デスクで一般的な8cmほどの高さのモニター台の下でも余裕を持って置くことが可能です。本体の重量は変わっていませんが、軽量なのでその点もK5/K7と変わらず、可搬性も高いです。
機能・操作感レビュー
機能レビュー 〜豊富な設定
FIIO K11ではエントリークラスの中で比較的、豊富な設定が可能です。特にディスプレイが搭載されたことで現在のステータスをすぐに確認できるのはとても良いです。この機能は今後、K9PROなどの上位機種にもぜひ搭載して欲しいですね。そして、本体からすべての設定ができることでゲーム機との接続時も問題ない上、都度、設定できるスマートホンに繋ぎ直すという手間がありません。そしてディスプレイの明るさやRGBの色設定は、それぞれのデスク環境に合わせて細かく設定することができます。この点もエントリーモデルの据え置きとしてはありそうでなかった嬉しい機能です。これらの機能により、マイク入力はないもの、ゲームシーンで使いやすいですし、ドライバーも不要なため、仕事先やテレワークなどでも使いやすいと思います。
操作感レビュー 〜アクセスしやすい設定
次にFIIO K11の操作感です。マルチファンクションノブのみを利用した設定方法なので、必ずしも操作性は良いとは言い切れませんが、特に困ることはありません。この操作感はSteelseriesのGameDacと似ています。詳細な設定にはいくつかの操作が必要なものの、最もよく使う機能である音量調整や入力機能はマルチファンクションノブからすぐにアクセスでき、ステータスも視認できるので不便さは感じません。ただし、ゲーミングDACと違う点として、マルチファンクションノブを正面から奥方向に押すので、本体が軽いことも相まって、ノブを押す際に奥側に動いてしまうことがありました。解決策として滑り止めの上にK11を置くと良いです。K11本体の下側はゴム/シリコン素材のような滑りにくい接点となっているので、デスク側にも滑り止めを置けばノブを押す際に本体が不用意に動いてしまうことは軽減できそうです。
サウンドレビュー
FA9、FH11、FT3など/USB接続/J-POPを中心に/ゲームはPS5でAPEXなど
キラキラとした中高音(ボーカル)
ここ最近のFIIO製品の共通の特徴で、ボーカルが主役のサウンドです。FIIO K11のサウンドスタイルは中高音〜高音がキラキラと明るく、程よい解像感があります。過度に音の粒が立つようなサウンドではなく、高域の刺さりも少ないです。そのためKA13のエネルギッシュという印象よりも、キラキラという印象に感じました。特にこのK11はデスクトップ型という性質上、音質が有利に働いているのか、KA5やQ11、KA13よりも最もボーカルが映えて聴こえました。なお、ボーカルが前に出ていますが、特に強調しすぎているというほどでもないので、全体としてはクセが無くすっきりとしているサウンドです。またヘッドホン(FT3)も十分に駆動できているように感じます。
レスポンスの良い低音
もう一つの特徴としてレスポンスの良い低音があります。KA5に近い傾向なため、低音が強く押し出されているサウンドバランスではありませんが、デスクトップ型ということで駆動力でそれを補い、必要な低音の量があります。低音の質感は硬く、やや浅めです。低音が沈み込まないことでイヤホン/ヘッドホンによってはやや平面的に感じる可能性があります。その代わり、低音のレスポンスがよく、音にキレがあります。ドラムの叩くリズムの速い曲でもしっかりと追従し、キレのあるサウンドを楽しむことができます。
ゲームはやや前方定位だが、解像度が高い
いくつかのアクションゲームとFPSではAPEXでK11を試してみました。使用したヘッドホンはSteelseriesのArctis Nova Pro Wireless(有線接続)とFIIOのFT3です。まずPS5において音量を十分に取ることができました。この点の心配は全くありません。次にFPSで大事なポイントとなる定位感と足音などの解像度です。FIIO K11の定位感はやや前方定位で後ろ側の音を捉えるのは苦手ですが、左右の振り分けはしっかりとしていて聴き取りが可能です。次に解像度ですが、細かな音までしっかりと捉えることができます。ただし、元のサウンドバランスがやや中高音寄りのため、同じように中高音寄りのイヤホン/ヘッドホンを使うと足音の強調がやや少ないように感じました。一方で中低音寄りもしくはV字型で低音も前に出るタイプのイヤホン/ヘッドホンであれば、ゲーミングDACよりも高い解像度を活かして足音も聴き取りやすいです。イヤホン/ヘッドホンの組み合わせは選びますが、FPSゲームで十分に使えるデスクトップ型DACです。ちなみにPS5との接続では高音がやや渇いた印象があり、高音の強い効果音では音が刺さる印象がありました。そしてFPS以外のアクションゲームなどのサウンドは元のサウンドバランスが通常のオーディオ向きなのでムービーやBGMなどの臨場感はとても良いです。
総評
FIIO K11はエントリークラスとして、またゲーム用のDAC/アンプとして使いやすく、おすすめできる製品です。特にマルチファンクションノブとディスプレイを搭載したことで、アプリを介さず本体設定を全て行うことができるので、ゲーム機のみのユーザーも問題なく使用することができます。またドライバーインストールも不要である点も、初めてのDACとして扱いやすいです。そしてサウンド面もPOPSと相性が良いサウンドバランスであるものの、全体としてクセがなく、レスポンスの良い低音によって比較的、どのジャンルの曲とも合わせやすい点も万人に受けしやすい印象です。またこのレスポンスの良さがFPSゲームとも相性が良く、定位感や解像度も十分ですので、ゲーム専用とまではいきませんが、ゲーム用DACとしても使いやすい部類です。さらにEQを組み合わせることでよりゲーム特化にすることもできると思います。なお、エントリークラスという価格帯での評価は以上となりますが、上位機種のK7やK9シリーズと比べると低音の不足による音の厚み、音場の広さの不足による空間表現や余韻において劣る部分がありますので、その辺りが気になる方は上位機種と比較しながら用途や予算で検討をおすすめします。
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