FIIO FF1とはFIIOの新作イントラコンカ型イヤホンです。FIIO FF1の発売日は9月15日(中国8月18日)から発売開始となりました。今回も中国の発売日に注文し、入手できましたのでレビューをしていきます。
はじめに簡単に概要を紹介します。FIIO FF1はイントラコンカ型イヤホンです。FIIOのイントラコンカイヤホンはこれまでEM3、EM5、FF3、FF5がありました。すでにEM3、EM5は生産終了となっていて、今回のFF1は現存のFFシリーズの新作でエントリーモデルとなります。14.2mmのダイナミックドライバーを搭載し、音質や外観のデザインだけではなく、装着感にもこだわったイヤホンとなっています。また5,980円とリーズナブルな価格で、マイク付き、USB-C変換アダプター付きで汎用性の高いイヤホンとなっています。そのためイントラコンカ型イヤホンが好きなユーザーだけでなく、初めてのイントラコンカ型イヤホンとして、またAppleのEarPodsを使っているユーザーなどにもおすすめです。それでは詳しく紹介とレビューを行っていきます。
レビュー総括
FIIO FF1はデザイン、サウンド、装着感の三拍子の揃ったイントラコンカイヤホンとなっています。まず装着感では、FIIO FF3やFF5よりも自然で滑らかな付け心地となっています。これはFF5より約1g(片側本体のみ)も軽い本体に加えて、僅かにシェルの直径サイズが小さくなったことによるものです。またケーブルの取り回しも非常に良く、使い心地へのこだわりを随所に感じます。
次にFIIO FF1のサウンドです。シリコンリング使用です。ボーカルが主役のサウンドバランスで、一体感のあるサウンドが特徴です。細かく聴いていくとイントラコンカのふわっと広がる音場の中で、低音も柔らかく横に広がっていきます。イントラコンカという性質上、輪郭ははっきりとまではいきませんが、ブーミーさはありません。また低音は決して抜けすぎておらず、適切な量があります。次に中高音〜高音は抜けが良く、エレキギターや管楽器も抜けの良い響きを持っています。これらの低音や中高音の特徴はFF3とFF5のそれぞれ良い要素を取り入れています。FF3とFF5と比較するとボーカルとの距離感はFF1が最も遠く、全体的に一歩引いたような位置にあります。そのためサウンドの迫力や解像度という点ではFF3やFF5と比較すると劣っている印象があります。また一体感のあるサウンドの裏返しで、音像がややぼやけていて定位感も不足しています。しかしながらこのボーカルが主役で一体感のあるサウンドにはグルーヴ感があり、長時間のリスニングのしやすさや汎用性の高さがあります。また価格も6千円と上位のFF3、FF5に対して1/3以下の金額であり、エントリーモデルとしてFIIOのイントラコンカの魅力が詰まったイヤホンとなっています。
Pros
- 装着感がよく、長時間の付けることが可能
- ケーブルの取り回しが非常に良い
- リケーブルが可能
- ボーカルが主役で一体感のあるサウンド
- 柔らかく横に広がる低音
- 抜け感の良い高音
Cons
- 音像がややぼやけている
- 定位感は不足
- 独自の2pin採用
FIIO FF1 60秒の概要とレビュー
FIIO FF1 価格・発売日
発売日:2023年9月15日(中国8月18日) 価格:5,980円(中国149元/29.99ドル)
FIIO FF1はFIIOのイントラコンカイヤホンの中で、エントリーモデルに位置することから、リーズナブルな価格となっています。日本の販売価格は4〜5,000円台と予想していましたが、ほぼ6,000円とかなり強気の価格設定となってしまいました。現在ドル円が147円前後と円安ではありますが、それでも2,000円近く高いです。法的要件のある製品ではありませんので、個人的にはこれであれば海外サイトで購入できる方はそちらで買われた方が良いと感じました。ただし保証のリスクはありますので、必ず個人の責任でご購入ください。
FIIO FF1 価格・発売日
特徴は次のとおりです。
- 14.2mmのダイナミックドライバー
- PU+ベリリウムメッキダイアフラム
- ステム上部に隠れる細い音響パイプによる低音の質の向上
- シェルの直径を従来の16.5mmから16.2mmにサイズダウンし、装着時の快適性が向上
- 3.2gの軽量設計で長時間の着用が疲れにくい
- リケーブルが可能(ただし独自形状の凹凸を持った0.78/2Pin)
FIIO FF1はエントリーモデルでリーズナブルな価格ながら、随所にFIIOのこだわりを感じるイヤホンとなっています。音質面ではイントラコンカの弱点である低音の質の向上のため、上位機種の技術を反映させるだけではなく、音響パイプやダイナミックドライバーの構造はFF1独自のものとなっています。
またこのFF1の最大の特徴は装着感へ最大限配慮したデザインとなっていることです。シェルの軽量化だけでなく、シェルの直径のサイズダウンまで行っています。またFIIO公式によれば寝ながらの使用も想定した設計となっているとのことです。
基本仕様
イヤホンタイプ | イントラコンカ |
ドライバー | 14.2mmのダイナミックドライバー |
周波数応答 | 20Hz-20kHz |
インピーダンス | 40Ω @ 1 kHz |
感度 | 106dB/mW @ 1 kHz |
ケーブル / 長さ | OFC / 1.2m *マイク付き |
イヤホン本体のアダプター | 0.78/2Pin *ただし独自の凹凸構造 |
ケーブルプラグ | 3.5mm *マイク付きのため4極 |
同梱物
FIIO FF1の同梱物はかなり充実しています。低価格帯のイントラコンカは、他社では全面を覆う形状のスポンジのみであることがほとんどですが、FF1ではドーナツ状のスポンジに加えて、シリコンタイプのリング、フィン付きタイプのシリコンリングが付属しています。またマイクにも対応したType Cアダプターも同梱されています。フィン付のシリコンリングは尖っている先っぽを前方(顔側)に向けて装着します。
- イヤホン本体
- ケーブル
- Type Cアダプター
- シリコンリング 2サイズ(白が大きめ、黒が小さめ)
- フィン付シリコンリング 1サイズ
- スポンジ2種(全面・ドーナツ)
- 説明書
また今後、独自の端子であることからユーザーから要望の多いケーブルやアダプターはFD11やFH11同様に販売するそうです。マイクなし3.5mmやType C、4.4mmのプラグバージョンのケーブルが予定されているようです。現時点で付属しているケーブルについて解説します。
0.78/2pinと一般的なリケーブル可能なイヤホンとピンの直径サイズは同じです。しかしながらピンの長さと凹凸の形状が異なります。ピンはフラット2pinより長いです。また凹凸部分は上の写真のように楕円の形状をしています。そして真ん中には一般的な埋込2pin型と同じような溝ができています。この独自の凹凸構造を使用する理由としてFIIOの説明を引用します。
結論から言えば、ユーザーがケーブルの断線などで壊れた際に、買い替えのコストを減らすためにリケーブルを可能としたようです。ただしリケーブル可能とするためには相応の生産コストの増加となってしまうため、そのコストを抑えならがら耐久性を考慮して独自形状を採用したということのようです。
Q:なぜMMCXではないのか
A:MMCXにした場合、15元近くコストが増加します。またFF1の場合、MMCXでは大きすぎるためにデザインに制限が出てきて、寝ながらの使用などの体験にも影響します。Q:フラット2pinをなぜ採用しないのか
A:フラット2pinの場合、凹凸を接続する設計がありません。これにより、①細い2本のピンに依存した構造で、ピンが曲がりやすい。②どのようなピンサイズでも刺せるため、誤った2pinを刺して壊れる可能性(ガバガバになるような状態)があるためです。その他
FIIO説明より抜粋(※当ブログによる翻訳です)
・イヤホンのアフターサービスで最も多いトラブルはケーブル関連です
・リケーブルできない場合、本体を買い直す必要があるため、ユーザーコストを可能な限り減らすためにリケーブル可能としました
・ユーザーのニーズに応じて、アップグレードなどのケーブルを検討する予定です。ただし需要はそこまで大きくないと見ています
外観・装着感レビュー
マットなブラックカラーのデザイン
まず外観のデザインです。FIIO FF1は約6000円のエントリーモデルですが、安っぽさをあまり感じません。これは本体がプラスチック製ですが、テカテカしていないからです。FIIO FF1のイヤホン本体は梨地のような僅かに凹凸の感じるサラサラとした質感で、マットなブラックカラーとなっています。これによっておもちゃのようなテカテカ感がないので安っぽさを感じませんでした。なお、今回は黒のみ発売開始となっていますが、今後シルバーも予定されています。(追加情報)シルバーモデルを入手しました。FF1のシルバーモデルは、イヤホンの本体だけでなく、ケーブルのマイク、スプリッター、プラグに至るまで全てシルバーになっていて統一感があります。
非常に快適な装着感
次に装着感です。まずLとRの判別ですが、FF5より視認しやすくなりました。これは本体とケーブルの両方にLとRが記載されているからです。実際に耳に付けてみると、FF5より若干、装着感が良くなっています。これは本体がさらに軽くなったことに加えて、僅かに小さくなったシェルの直径サイズによるものだと感じました。
シェルの直径サイズについては以前、FIIO FF5やNobunaga Labsの鶯のレビューにて解説しました。改めて本記事にて説明します。他社のイントラコンカ型でNICEHCKのEB2S/B70、Nobunaga Labsの鶯は15.4mmのダイナミックドライバーを採用していることから、シェルの直径サイズがFF1と比べて大きいです。例えばイントラコンカで有名なPai audioのものと測ってみると直径サイズは1mmもの差があり、またNICEHCKのB70でも0.6mmの差がありました。これらのFF1より大きいサイズのイントラコンカでは耳のコンカ(耳の内側のイヤホンをはめる位置)が大きくない人にとっては圧迫感があり、使用していると耳が痛くなってしまいます。
一方でFIIOのイントラコンカはシェルの直径サイズが小さくなっていて、圧迫感が少なく、長時間使用していても比較的痛くなりにくいです。そしてFIIO FF1はこれまでのFIIOのイントラコンカより、僅かながら直径サイズが小さくなっていて、さらに重さもFF5より約1g軽くなったことで、より自然な付け心地を実現しています。FF1とFF5の直径サイズを測定しましたが、公表通り、0.3mmの差がありました。下の写真はFF5とFF1を上から撮影したものですが、見た目でも僅かに小さく見えます。仮に耳のサイズが大きい人は、シリコンリングのLサイズやフィン付シリコンリングを使用することで装着を安定させることが可能です。
またFIIO FF1は寝ながらの使用時も圧迫感が少なかったです。夜中に2時間程度、ボイスチャットを使ったゲームで寝ながら使用いましたが、痛くなることはありませんでした。またマイクも問題なく使用することができました。
ケーブルの取り回しも◎
最後にFIIO FF1のケーブルの取り回しです。この点はあまり意識していなかったのですが、開封直後にしっかり巻かれた状態のイヤホンケーブルをほどく時は比較的、ケーブルが絡まりやすいです。しかし、このFF1のケーブルは絡まった状態でも、サラサラした質感のシースによって、ほどけやすかったです。また一度ほどいてしまえば、ケーブル自体はコシがあって絡みにくいです。分岐後はケーブルは一般的なイヤホン同様、PVCか何かの皮膜になっています。このように装着感だけでなく、ケーブルの取り回しにも配慮されている点も好印象です。
サウンドレビュー
試聴環境:BTR7、M11S、K9PRO/J-POPを中心に10曲前後/シリコンリング
ボーカルが主役で一体感のあるサウンド
FIIO FF1のサウンドバランスはかまぼこで、ボーカルの音域が低音や高音に比べると前に聞こえてきます。ただ、バランスとしてボーカルが前にありますが、全体として音像は一歩引いた位置にいます。そのためボーカルの口の形ははっきりとしていながら、一体感のあるサウンドが特徴的です。サウンドに一体感があることで、グルーヴ感やエモーショナルな印象が生まれています。一方で音像はややぼやけていて、定位感も不足しています。この点は一体感のあるサウンドとのトレードオフとなっている部分もありそうです。とはいえFIIO FF1は高い解像度や分離感はありませんが、Big bandのような大編成の曲でも必要な楽器の聞き分けはできる分離感は持っています。
またFIIO FF1の低音は適切な量とアタック感があります。FIIO FF1の低音はアタック感がありつつも、跳ねてくるような低音ではなく、柔らかく横に広がるタイプです。輪郭ははっきりとしていませんが、決してブーミーではありません。イントラコンカというと低音が出ていないイメージを持つ場合もありますが、FIIOのイントラコンカでは他社に比べてドライバーサイズは小さくても、全くそのようなことはありません。適切な低音があります。FIIO FF1をK9PROのようなより駆動力の高いアンプを通すとしっかりとした低音を感じることができ、イントラコンカのネガティブイメージが払拭されます。
中高音〜高音の抜け感が心地よい
FIIO FF1のもう一つの特徴として中高音〜高音の抜け感が心地よく感じました。これにより女性ボーカルはもちろんのこと、エレキギターや管楽器の響きも綺麗です。また音像が少し遠いことにより、ボーカルや楽器との距離がほど良く離れているため、中高音〜高音の刺さりやソリッド感があまりないことも心地よさにつながっています。ただし、解像度は高くないので人によっては中高音〜高音がやや暗めに感じる場合もありそうです。そのため暗めの曲よりも明るい曲の方が相性が良いです。またギターを弾く音(ピッキング)が強い曲や録音自体の音圧が強い曲(例:あいみょんの「憧れてきたんだ」)においても、音が刺さりにくいです。*この曲は暗めの曲のため相性が良いわけでなく、あくまでリファレンス的にチェックするとという意味合いになります。
これらの特徴と相性の良いおすすめのアーティストは「水曜日のカンパネラ」です。ボーカルが主役で一体感のあるサウンドを持つFF1と相性がとても良いです。比較的キーの高いボーカルの声は抜けがよく、ヒップホップやダンスミュージックの要素を取り入れた曲は、グルーヴを感じながらノリ良く聞くことができます。低音がずんずんというタイプではなく、心地よくリズムにのれるFIIO FF1のサウンドをぜひ試してみてください。
FF3・FF5の良さをうまく取り入れたサウンド
FIIO FF1の面白いと感じた点で、FF3やFF5の良いところ取りをしていることです。これはFF5の中高音〜高音、FF3の低音です。ただし、これらを完全に再現されているものではなく、破綻しないちょうど良い塩梅で取り入れていることによって、サウンドがFF3とFF5の間のバランスになっています。まずFF5は中高音よりの(女性ボーカルキラーと言われる)サウンドバランスで、FF1よりさらに明るいサウンドです。中高音〜高音は抜けがよく見通しがはっきりとしています。また中高音〜高音の輪郭がよりはっきりとして、ボーカルも近く感じます。その代わり、音の刺さりが気になる場面があります。次にFF3は中低音よりのサウンドバランスで、FF1よりやや暗めのサウンドです。低音が特徴的で、暖かみのある低音でイントラコンカとは思えない迫力と重さがあります。その代わり、中高音〜高音がこもって聴こえる場面があります(この点はFF1と少し共通しています)。
対してFIIO FF1はこのFF3とFF5の良いところをほどよく取り入れていて、中音〜中高音よりのバランスとなっています。また良い塩梅でというのは、最初の特徴の通り、FF3とFF5それぞれの良さを取り入れつつも、FF1はボーカルが主役で一体感のあるサウンドが特徴です。その代わり、やや音像がぼやけているように感じます。FF3とFF5ではそれぞれ明確なストロングポイントがあって音像がはっきりとしています。FIIO FF1単体のサウンドとしては完成度が高いですが、高い解像度や分離感、女性ボーカルに特化したサウンド(FF5)、ドラムのような低音(FF3)を求める方にとってFF3とFF5がおすすめです。FIIO FF1には高い解像度はありませんが、一体感のあるサウンドはグルーヴ感があり、また汎用性の高さがあります。当ブログではハイトーンの女性ボーカル中心に相性をレビューすることが多いですが、今回のFIIO FF1では菅田将暉など男性ボーカル、ハスキーよりのあいみょんなどの女性ボーカルとも相性がいいからです。また解像度や分離感は高くありませんが、バンド曲などでも一体感のあるサウンドによってノリ良く聴くことができます。
最後にゲームで使用してみて
今回マイク付きということで、通常のボイスチャットを使うゲームとApexで試してみました。結論としてはFPSのような定位感を要求されるゲームには向かないと感じました。足音の聞き分けは十分にできますが、どの方向から聞こえるかが捉えにくいからです。一方で、長時間の使用も痛くならないですし、さらに寝ながらの使用もできるので、FPS以外のゲームでの使用はぜひおすすめしたいです。ボイスチャットも聞き返されるというようなこともありませんでした。そのためiPhoneなどのスマートフォンで友人とダラダラ長時間というような利用シーンでは相性がとても良く感じました。Apple earbudsと比較すればFPSゲームでもアップグレードとしてもおすすめです。
以上、FIIO FF1のレビューとなります。
最後にFIIO FF1はこれまでの私が使用したイントラコンカ型イヤホンの中で装着感はNo.1です。これはFF3やFF5よりもです。イントラコンカを初めてのユーザーだけでなく、EB2Sなど低価格帯のイントラコンカしか使ったことないユーザー、Apple earbudsを使っているユーザーに特におすすめしたいです。また上位の機種を持っているユーザーにとっては、この装着感の良さを体験してもらいたいです。そうすれば気軽に使う一本として購入したくなると思います。ぜひ試してみてください。
FIIO FF3とFF5、Nobunaga Labs 鶯のレビューも併せてご覧ください。
NOBUNAGA Labs 鶯 新作インイヤーイヤホンレビュー
EARL(ライフスタイルDX)
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