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FIIO JD1が2023年10月31日に中国で発売されました。当ブログでは発売日に購入し、入手できましたのでレビューをしていきいます。日本では2024年7月5日に発売されました。タイプC版との同時発売です。
レビュー総括(Summary)
まず装着感で、FIIO JD1は一般的なCIEM型の形状をしています。そのため他社のイヤホンとほぼ同じ装着感を持つモデルです。またカナル型特有の耳が詰まるような感覚が少ないです。そしてフェイスプレートが金属製かつ鏡面加工されているため、フェイスプレートだけを見れば3,000円とは思えない外観をしています。一方で、シェルのボディ部分やケーブルのプラグ部分のカバーも価格なりの素材が使われているため、全体で見れば音質以外のコストは最小限に抑えられたモデルとなっています。
サウンド面では弾力のある低音が特長です。サウンドバランスは弱ドンシャリと呼ばれるものに近く、V字型のバランスです。そして高音部の刺さりとなるような音域がしっかりと抑えられていて、V型でありながらハキハキとしたというよりも、暖かみのあるサウンドとなっています。また暖かみのあるサウンドは艶っぽい音にも感じる曲がありました。一方で高音部がかなり抑えられているため、高音の見通しや伸びは感じづらいです。そのためトーンの高い歌モノやACGのジャンルよりもROCKやフォーク、男性ボーカルのバラードとの相性が良いです。また低音も弾力のあるタイプでEDMやダンスミュージックとの相性も良く感じました。また低音が少し前に出ていて、高音が抑えられていることでゲーム、特にFPSゲームとの相性の良いサウンドバランスにも感じました。
FIIOの他のイヤホンと比較するとJD3より明らかに音の厚みが増していて、同じ価格ながらJD1がおすすめです。一方で価格帯の上がる上位機種FD11やJD7と比較するとボーカルの表現や中高音〜高音の見通しの良さが明らかに優れているため、予算があればFD11をおすすめしたいです。他方でJD1のサウンドバランスはFD11やJD7とは異なるので、JD1の低音が好みであれば価格やグレードを超えて選ぶ理由があります。またゲームでの使用を想定している場合にはJD1の方が相性が良いです。
Pros
- フェイスプレートはデザインが良い
- 弾力のある低音
- 刺さりをしっかり抑えられた高音
- ゲーム、特にFPS向きのサウンドバランス
Cons
- フェイスプレート以外は価格なりの質感
- 高音部が抑えられていることで見通しや伸びが感じにくい
FIIO JD1 発売日・価格
発売日:2024年7月5日(中国2023年10月31日) 価格:3,500円前後(海外99元/20ドル)
販売情報:Amazon / eイヤホン / Aliexpress
FIIO JD1はサブブランド発のモデルであり、かつ「1」の最も低いグレードの型番であることから価格が非常にリーズナブルです。この価格はJD3の海外価格を同じであるため、日本でもし発売された場合は同じ3,300円程度もしくは円安により4,000円台の価格になると予想しています。(追記)日本の価格は160円近い円安ですが、通常の3.5mmプラグ版が3,300円、タイプC版が3,500円と価格はほぼ同じとなりました。現在の為替状況であれば保証も踏まえれば国内で買うのがお得となっています。
FIIO JD1 スペック・製品概要など
スペック
モデル | JD1 |
構成 | 1DD (シングルダイナミックドライバー) |
ダイナミックドライバー | 10mmのLCPドームのダイアフラム |
周波数応答 | 20Hz-20kHz |
インピーダンス(@1kHz) | 24Ω |
感度(@1kHz) | 109dB |
ケーブル素材 | OFC |
ケーブル長 | 1.2m |
ケーブルプラグ | 3.5mm/4極(付属はマイク付ケーブル) |
ケーブルコネクタ | QDC 0.78/2Pin |
製品概要・特長
長時間のリスニングも快適に
FIIO JD1はフロントキャビティとリアキャビティの空気圧をバランスの取れた状態に調整することができ、ダイヤフラムの歪みを防義、低域の能力を向上させるだけでなく、鼓膜への圧迫感を軽減し、長時間聴いても疲れません。またJD1は軽量な製品設計を採用しており、イヤホン単体(片側あたり)の重量はわずか7gです。重さを感じない快適な装着感を提供します。
慎重に行われたチューニング
FIIO JD1はLCP 素材のダイアフラムを採用した既存製品のレベルを克服し、そのレベルを超えることに焦点を当てています。これにより、音楽を聴くときにはJD1を通して弦の振動を感じることができ、ゲームプレイヤーは敵や対戦相手の存在を捉えることができます。FIIO JD1の300Hz ~ 20Hz の低音域では映画やゲームを観ているときのエンジン音や爆発音、音楽を聴いているときのドラムやベースの音など、JD1はまるでサブウーファーを備えた劇場のような臨場感をもたらし、その世界に没入することができます。2KHz~5KHzの周波数帯域では、HRTFに従ってJD1のゲインを調整しました。これにより、ゲームや映画にさらなる空間感がもたらされ、音楽にもさらなる再現力がもたらされます。そして6.5kHz 周波数帯域は中音域と高音域のバランスを取るために控えめに調整されています。刺さり、歯擦音やキンキンとした音が効果的に抑制されます。
FIIO JD1周波数特性(F特性)
JD1
JD1 vs. FD11 vs. JD7
同梱物
FIIO JD1の同梱物は次のとおりです。
- イヤホン本体
- マイク付ケーブル
- イヤーピース1種/3サイズ
- 説明書
サブブラントかつエントリークラスのイヤホンであるため付属品は必要最小限となっています。
ケーブルについて
FIIO JD1のケーブルはコネクタにQDCタイプの0.78/2Pinが採用され、一般的なQDCコネクタのケーブルとも互換性があります。またこのJD1はゲームでの使用も想定されているため、付属ケーブルはマイク付きで、音量調整と再生/停止のインラインコントロールも可能となっています。対応する再生機であれば、このコントローラーから操作が可能です。
外観・装着感レビュー
外観
FIIO JD1のフェイスプレートは鏡面加工でこの価格帯とは思えない洗練さを持っています。一方で、ボディ部分は中身が透けて見える外観で、価格相当の一般的なシェル素材となっています。フェイスプレートにコストを割くことで、イヤホンの見える側面のデザインはとても良いので低価格帯ながら所有欲を満たしてくれます。
装着感
FIIO JD1は一般的なCIEM型と呼ばれる形状をしていて、装着に違和感はありません。FIIOのイヤホンは比較的、特徴的な形状をしているものが多く、好みが分かれることもありますが、このJD1は普遍的な形状です。またカナル型イヤホンはしばらく付けていると耳が詰まるような感覚で疲れてきますが、FIIO JD1はその詰まりが少ないように感じました。そのためある程度の長時間でも耳の中が痛くなりにくく、聴き疲れしにくかったです。一方でイヤーピースを装着するノズル(ステム)は太めの設計で、素材が固いイヤピースや軸が細めのイヤピース、フォームタイプは付けるのが難しいかもしれません。FIIOのイヤピースHS18は手こずることなく付けることができました。
サウンドレビュー
弱ドンシャリ、弾力のある低音が特長
FIIO JD1のサウンドバランスは弱ドンシャリでV字型です。そして弾力のある低音が特長で、弾むようなベースラインはクセになります。弱ドンシャリのバランスの中で、低音がやや前に出てきていますが、それが支配しているということはなく、サウンドに厚みや暖かみを出す良いバランスになっています。一方で高音がしっかり抑え込まれていて、例えばエレキギターやピアノの響きは見通しや伸びがあまり良く感じません。そのため低音は臨場感のあるものですが、高音部が抑え込まれているように感じて、全体としては保守的なサウンドとなっています。裏を返せば、高音の刺さりは全くありません。このようなサウドバランスなのでトーンの高い歌モノ、ACGとの相性はあまり良くなく、ROCKやEDM、ダンスミュージックのようなジャンルとの相性が良いです。またあいみょんや菅田将暉のフォーク曲との相性も良かったです。特にあいみょんの曲ではボーカルの音圧やアコースティックギターのカッティングが強すぎて耳がキンキンするイヤホンも多いですが、このJD1ではそのようなことは全くなく楽しむことができます。またボーカルが艶っぽくもなるので、トーンの低めのバラード曲も悪くありません。
ゲーム、特にFPS向けのチューニングか
FIIO JD1のサウンドバランスを聞いたときにゲーム、特にFPSとの相性が良さそうと感じました。その理由としてまず、低音が前に出ていることです。低音が支配的ではサウンドバランスが崩れてしまいますが、FIIO JD1はバランスが崩れない範囲で低音が前に出ていて、足音などの音を聞き取りやすいです。次に高音がしっかり抑えられていることです。高音が抑えられることでFPSで銃撃音などの効果音が耳にキンキンと響くのを防いでくれます。そのため音楽だけでなく、ゲーム、特にFPS向けのチューニングのようにも感じました。FIIO JD1であれば特にEQをかけなくても、足音を聞き分けしやすいバランスとなっています。ただ上位の価格帯に比べると音の分解能が足りていないので、アラウンド5,000円の中でおすすめできますが、エントリーモデルの範囲にはとどまっています。
FD11やJD7との比較、ポイントは低音
FIIOのダイナミックドライバー搭載イヤホンで、FIIOブランドのエントリーモデルであるFD11、サブブランドの上位機種であるJD7との比較しました。この二つの他にJD3というモデルもありますが、これはナンバリングが上位であるものの、JD1と同じ価格で、さらにクオリティはJD1の方が高いと感じました。
本題のFD11とJD7と比較で、まずはパラメーター的な比較です。低音の量はJD1>FD11>JD7で、低音の量が少ないJD7が最も高音寄りです。これに関連して音の暖かさではJD1>FD11>JD7です。JD7は冷たく感じるサウンドです。ウェットな度合いではJD1>FD11>JD7です。JD7では乾いてるサウンドに感じます。このようにJD1とJD7は対極的なチューニングスタイルとなっています。FD11を中間に置いていますが、ややJD7寄りです。この中ではイヤピースによってFD11は低音の量感が変化しやすいので万能型と言えます。女性ボーカルやPOPS、ACGのジャンルではFD11、JD7がおすすめです。男性ボーカルやROCKのジャンルではJD1、FD11のイヤピースを低音ブーストのタイプに変えると相性が良いです。ただし、クオリティという面ではやはりFD11やJD7の方が上位に感じました。これは主に音の輪郭がよりはっきりとしていて、聴きたい音を捉えやすく、また高音のチューニングの違いかもしれませんが、より中高音〜高音が繊細に綺麗に感じました。他方でJD1の特長の低音を感じるサウンドバランスやしっかり抑えられた高音はFD11やJD7では代替できないバランスを持っています。またゲームでの使用もJD1の方が装着感やサウンドバランスで相性が良いです。これらの点で気に入った場合にはグレードを超えてJD1を選ぶ理由になると思います。
以上、FIIO JD1のレビューでした。
EARL(ライフスタイルDX)
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