今回は主要7製品のゲーミングDACのオーディオ性能を比較することで、PS5、ゲーム向けにおすすめできるゲーミングDACがどれなのか検証していきます。比較する主要7製品は以下です。
- SteelSeries GameDac Gen1
- SteelSeries GameDac Gen2
- Sound Blaster GC7
- Sound BlasterX G6
- EPOS×Sennheiser GSX 1000(生産終了)
- EPOS GSX 1000 2nd Edition
- Astro Mixamp Pro
以前Mixampをオーディオ機器のDACと比較した際にはあまりに微妙だったので「ゲーミングDACのオーディオ性能って実際どうなの?」「本当にゲームの音を良くしているの?」と疑問に思ったので、今回は評価の高い主要なゲーミングDACのオーディオ性能を比較していきます。またゲーミングDACのレビューはほとんどが2−3年前の内容からアップデートがされていません。最近のオーディオ機器は1−2万円台で、安くて高性能なDACが出てきています。特にドングルDACと呼ばれるスティック型のDACは1万円前後で買うことができます。それに対して主要なゲーミングDACの性能が劣っていないかも注目です。最後にスペック比較をした結果としておすすめのゲーミングDACを選びたいと思います。
これまで2021年のSound Blaster GC7以降、ゲーミングDACの新機種が出ていませんでしたが、SteelSeriesのGameDac Gen2が発売が発表されました。2022年8月5日に発売です。単体の販売はなく、Arctis Nova Pro(ヘッドセット)とセットでの販売のみです。Arctis Nova Proの有線モデルとのセットが最安値で、それでも3.8万円とかなり高価な商品となっています。しかしこれまでのゲーミングDACと比較して、過去の製品の全てを上回るハイスペックマシーンとなっています。このGameDac Gen2のスペックについて解説しますのでぜひ購入の検討材料にしてください。さらに11月22日にEPOSからGSX1000の後継機としてGSX1000 2nd Editionが発売します。スペックを見る限りは公表情報が少ないために7.1サラウンド対応、ボイスチャットの高音質化のみとかなりのマイナーチェンジに止まっていることからあまり期待はできなさそうです。
はじめに
今回の記事ではゲーミングDACの主要7製品のスペックを並べて比較していきます。これまでMixampとGameDac Gen1は購入していて、GameDac Gen1のレビューは後ほどご紹介します。SteelSeries Arctis Nova Pro Wirelessを購入しましたので、こちらも併せてご紹介します。
それでは実際にゲーミングDAC主要製品のオーディオ性能を比較した結果の概要は以下の通りです。
- Mixamp、GSX1000はPC、コントローラーにイヤホン直差しと変わらない
- そもそもMixamp、G6、GSX1000(2nd Edition含む)は心臓部であるDACチップや詳細なスペックが公表されていない
- GSX1000 2nd Editionは前のバージョンに対してサラウンド対応、ボイスチャット高音質化のみのマイナーチェンジで、Mixampよりはマシなスペックに改良されているが他の機器からは遅れている
- Sound Blaster GC7に限ってはDACチップが公表されていて、オーディオ機器のDACでも使われる旭化成製のチップが搭載されていて最低限のクオリティは担保されている
- SteelseriesのGameDac Gen1/Gen2はDACチップ(ESS製)、サンプルレートに加えて、S/N比、THD + Nの数値が公表されていてスペックは良い
- SteelseriesのGameDac Gen1/Gen2とSound Blaster GC7はゲーミングDACとしておすすめできる
- 特に新しく発売されたSteelseriesのGameDac Gen2は現役のオーディオ機器にも匹敵する性能で、これまで発売しているゲーミングDACの全てを上回るハイスペックマシーン
今回焦点を当てているDACチップはゲーミングDACの心臓と言えるものです。このDACチップがゲームの音をより正確にヘッドホンなどに出力する大事な役割を担っています。そのためゲーミングDACのオーディオ性能はこのDACチップでほぼ決まっていると言っても過言ではありません。オーディオ性能を決めることになるのでオーディオ機器のDACはこのDACチップを必ず公表しています。一方でゲーミングDACであるMixampやGSX1000(2nd Edition含む)、Sound BlasterX G6はDACチップを公表していません。またその音質の指標も公表していません。対してSound Blaster GC7とSteelseriesのGameDac Gen1/Gen2はDACチップが公表され、そのDACチップも価格相応のチップが搭載されています。さらにSteelseriesのGameDac Gen1/Gen2はサンプルレート以外のスペックもしっかり公表しています。スペックだけを見ればSteelseriesのGameDac Gen1/Gen2がゲーミングDACとしておすすめできます。なお、イコライザーという機能はあくまで補完的なもので、イコライザーをかければかけるほど音質が劣化します。元の性能値が悪いとイコライザーをかけてもさらに劣化させることになるのでご注意ください。
なおこの後解説する2022年8月5日発売のSteelSeriesのGameDac Gen2はESS社チップを搭載し、これまで発売しているすべてのゲーミングDAC製品よりもかなりハイスペックです。
今回ゲーミングDACに加えて、参考までにオーディオ機器のDACのオーディオ性能も載せておきます。最近、パソコンでゲームする際にはFiiO KA3に4.4mmバランス出力のイヤホンを使ってApexをやっています。この方法だと音がとてもクリアで定位感も抜群なので足音も捉えやすいです。バランス出力(左右独立した出力)は今回の比較ではややチートみたいな方法ですが、高価な製品でもないのでこちらは今度詳しくご紹介します。
GameDac Gen1レビュー
まず今回のスペック比較において、新たに発売されたGen2を除いて最も優れた製品であるGameDac Gen1のレビューからです。使ってみた感想としてはスペック比較の結果と同じで「いいじゃん」と思いました。その理由はApexをやってみたところ、このDACはゲーム専用にチューニングされているために、中低音域=足音が強調されている仕様になっているからです。これはハイレゾモードにしてゲームを行うと特に顕著に出てきます。ただし、高い音の解像度が低いため、銃撃音などの高い音は耳がキーンとし、違和感のある音がします。この音の感じは足音を強調するイコライザー設定に似た音の傾向で、GameDac Gen1は足音を聴きやすくするために特殊なチューニングをしていると見られます。この中低音域=足音の聴こえやすさやクリアさはMixampにはありませんでした。そのためもしゲーミングDACを検討する場合にはAstro Mixampと同価格であるGameDac Gen1をおすすめします。
もしマイク入力が不要であればオーディオ機器のDACをおすすめします。これはチューニングよってに音のバランスに違和感があるからです。足音がはっきり聴こえるようになりますが、FPSゲーム以外ではこれは違和感のある音となります。例えばRPGなどではBGMも重要なため、バランス良い音の表現が必要です。オーディオ機器のDACであればバランス良く音の解像度が高いので、FPSの時は足音がはっきり聴こえ、RPGなどのゲームでは違和感のない正確なゲームの音を聴くことができます。そのためFPSゲーム以外、マイク入力不要であればオーディオ機器のDACの方がおすすめできます。
[s_ad]GameDac Gen2 発売日とスペックについて
次に今回の主要製品の中で最もオーディオ性能が優れているGameDac Gen2 のスペック解説です。SteelSeriesからGameDac Gen1の後継機種として、GameDac Gen2 が発売されました。2022年7月26日から予約開始で、8月5日に発売開始です。価格はArctis Nova Pro(ヘッドセット)とのセット販売となっており、Arctis Nova Proワイヤード(有線)モデルとのセットで定価が約3.8万円とかなり高価になっています。
改良点はもちろん心臓部であるDACチップです。GameDac Gen1のES9018からES9218PQ40と大きくバージョンアップしています。ES9218はESS社の一世代前のDACチップで最新とは言えないまでも、今も現役のオーディオ機器に使われているDACチップです。そのためSteelSeriesが公表するサンプルレートやノイズ関連の数値はオーディオ機器に匹敵するスペックとなっています。
具体的にはこれまでハイレゾモードのみに限定されていたサンプルレート最大96khz/24bitが通常適用されます。またノイズ関連ではS/N比が111dBで、THD + Nはおそらく0.001%未満です。サンプルレートはオーディオ機器に比べると劣後しますが、ノイズ関連の数値はかなり優秀です。おそらくコンソール機が高いサンプルレートに対応していないことから、サンプルレートがGen1と変更していないと見られます。また今回のDACチップの型番から推測するとSteelSeriesのGameDac Gen2 用にカスタマイズされていると見られ、GameDac Gen1のレビューで記載したとおり、足音が聞こえやすくなるなどのゲーム向けの独自のチューニングがされていると思います。そのためこれまでのゲーミングDACを亡き者にするほどのハイスペックマシーンの可能性があります。
また端子関連では、製品写真を見るとこれまでSteelSeries独自のヘッドセット端子になっていましたが、3.5mmミニプラグが直で刺せる端子に変更されたようです。そのためGen1と違い、変換プラグなしで普段のヘッドセットも使えるようになります。これは嬉しい改良ポイントですね。またUSBタイプC端子が2つ搭載されていて、PCとPlayStationの2つに同時に接続が可能とのことです。ただしこれは”物理的に”同時にUSBケーブルを挿すことができるのみで、USB接続を利用して別の機器間でのゲーム音声とVCのミキシングはできません。あくまで接続先の機器を即座に切り替えることができるという仕様になります。そのため有線版では別の外部機器でVCを行って、それをゲーム音とミキシングすることは不可となります。ワイヤレスモデルに限ってはUSBとBluetoothの同時接続が可能なので、ゲームを行う機器とはUSB接続を行い、VCを行う機器とはBluetooth接続をすることでゲーム音とVCをミキシングすることが可能なようです。その他ラインのIn/Out端子が搭載されています。ここは光デジタルなどのデジタル出力を搭載して欲しかったですね。
実際にSteelSeries Arctis Nova Pro Wirelessを購入しましたので、そのレビューは下記、記事をご覧ください。
PS5におすすめ!! SteelSeries Arctis Nova Pro Wireless レビュー 次世代のゲーミングギア
ゲーミングDACのオーディオ性能比較
それでは本題の主要ゲーミングDACのオーディオ性能比較表です。それぞれの数値で、THD + Nは低い方が良く、サンプルレート、S/N比は高い方が良いです。DACチップは一般的にESS(ES)、旭化成(AK)が有名でオーディオ機器でもこの2社のDACチップが多く使われています。オーディオ機器のDACと比較してもSteelseries GameDac Gen1/Gen2がかなり健闘していることがわかります。加えてゲーム用にマイク入力やミキシングができるので、Gen2の発売により価格の下がったGameDac Gen1は特にコスパが良さそうです。またSound Blaster GC7に搭載されているDACチップ(AK4377)も少し古いものですが、オーディオ機器に使われていたDACチップです。新たに発売されたGameDac Gen2はGen1に搭載されているES9018のさらに上位の後継チップ(2世代分)であるES9218が搭載されており、これはAK4377よりも性能値が高いです。
それ以外のMixampなどの3つのゲーミングDACはDACチップが公表されておらず、Mixamp、GSX1000に限ってはオーディオ性能の数値(サンプルレート)が低すぎます。マイク入力がついていますが、その音質も最低レベルなのでコントローラー直差しと変わらないと思います。Mixampは実機を使って実際にそう思います。
※画像はAmazonリンクにしています。気になる方はチェックしてください。
①-1 SteelSeries GameDac Gen1
価格(投稿時点) | 14,345円 |
DACチップ | ES9018 |
サンプルレート | 最大96khz/24bit |
THD + N | 0.0032%未満 |
S/N比 | 109dB |
①-2 SteelSeries GameDac Gen2
価格(投稿時点) | 34,980円 |
DACチップ | ESS SabreQuad-DAC (ES9218PQ40) |
サンプルレート | 最大96khz/24bit |
THD+N | (おそらく0.001%未満) |
S/N比 | 111dB |
②Sound Blaster GC7
価格(投稿時点) | 18,800円 |
DACチップ | AK4377 |
サンプルレート | 最大192kHz/24bit |
THD + N | 公表なし |
S/N比 | 公表なし |
③Sound BlasterX G6
価格(投稿時点) | 17,500円 |
DACチップ | 公表なし |
サンプルレート | 最大384khz/32bit |
THD + N | 公表なし |
S/N比 | 公表なし |
④−1EPOS×Sennheiser GSX 1000(生産終了)
価格(投稿時点) | 27,997円 |
DACチップ | 公表なし(特製との表記) |
サンプルレート | 最大96khz/24bit (チャット16khz/16bit) |
THD + N | 0.005%未満 |
S/N比 | 公表なし |
④−1 EPOS GSX 1000 2nd Edition
価格(投稿時点) | 25,582円 |
DACチップ | 公表なし(特製との表記) |
サンプルレート | 最大96.0khz/24 bit *7.1サラウンド48khz/16bit |
THD+N | 0.005 |
S/N比 | 公表なし |
⑤Astro Mixamp Pro
価格(投稿時点) | 14,318円 |
DACチップ | 公表なし |
サンプルレート | 48khz/16bit (チャット16khz/16bit) |
THD + N | 公表なし |
S/N比 | 公表なし |
オーディオDAC(参考比較)
①FiiO KA3
価格(投稿時点) | 15,976円 |
DACチップ | ES9038Q2M |
サンプルレート | 最大768kHz/32bit |
THD + N | 0.0008%未満 |
S/N比 | 122dB |
②FiiO BTA30pro
価格(投稿時点) | 19,800円 |
DACチップ | ES9038Q2M |
サンプルレート | 最大384kHz/32bit |
THD + N | 0.0008%未満 |
S/N比 | 118dB |
最後に
主要なゲーミングDACのオーディオ性能を比較をしてきました。また最後には基準としてオーディオ機器のDACのスペックとも比較してみました。結論としてはゲーミングDACを検討しているのであればSteelseries GameDac Gen1/Gen2が良いです。それ以外は価格に見合った価値が本当にあるのか不明で、特にMixamp、GSX1000は価格が高すぎると思います。予算別で見れば1万円台でSteelseries GameDac Gen1の一択です。予算があればSteelseries GameDac Gen2が最もおすすめできます。もしゲーム以外の用途でも使いたいと考えているのであればFiiO KA3、BTA30proといったオーディオDACを検討するのが良いです。BTA30ProはPS5にも対応しています。
今回GameDac Gen2が登場したことでGameDac Gen1が1.4万円近くで手に入るようになったことも、他のゲーミングDACの検討の余地はありません。エントリーはGameDac Gen1、ハイエンドがGameDac Gen2というイメージで検討されると良いと思います。繰り返しですが、予算が許すのであればGameDac Gen2が最もおすすめです。
(追記)実際にSteelSeries Arctis Nova Pro Wirelessを購入した私個人の結論としては、ゲームオーディオは今後ワイヤレス化していくと感じました。これまでのゲーミングDACと比較すると高価かもしれませんが、ワイヤレス化という次世代の環境に対応する機器として、 Arctis Nova Pro Wirelessは非常に優れています。
なお、以前の記事ではPS5向けのDACとしてAstro MixampとFiiO BTA30proのどちらがおすすめか徹底比較してみました。
PS5おすすめDACはどっち?!Astro Mixamp ProとBTA30proを徹底比較
EARL(ライフスタイルDX)
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