
やっと株主の見方について書きたいと思います。初回は意外と誤認しがちな株主の見方です。
株式投資をする際に四季報を読むことがある思いますが、四季報の株主欄には大きな落とし穴があります。四季報の数値に関する定義を見ていない場合、また四季報を初めて読む場合は明らかに誤認させるような内容なので注意が必要です。東京証券取引所が定義する浮動株の計算方法を取り入れた方が実態に合っていると考えています。
四季報の落とし穴は株主欄に
四季報の株主欄の見方で注意をしなければならないのはこの二つの記載です。
- <浮動株>の比率
- <特定株>の比率
この二つの数値は表裏一体となりますが、
浮動株の計算式は「1単元以上50単元未満」です。また特定株の計算式には大株主(1位から10位まで)全てが含まれています。
この50単元未満に区切ってしまっていることによって、浮動株比率には50単元以上を持つ個人投資家や機関投資家の持株数が含まれていません。また大株主1位から10位にいる機関投資家名義の持株数の全てが特定株に含まれてしまっています。
さらにもう少し詳しく問題点を解説します。
①浮動株に50単元以上が含まれていない問題点
多くの上場企業において1単元は100株ですので50単元は5,000株です。
小型株においては5,000株以上を日々売買することは難しいかもしれませんが、トヨタ自動車やソフトバンクなどの大型株においては5,000株以上は日々売買できる株数です。また中型株においても日々ではないにしても株価が動く場面では売買される株数です。
②特定株に大株主1位〜10位全てが含まれている問題点
下記表はソフトバンク(9434)の有価証券報告書に記載の1位から10位までの大株主です。
このうち、機関投資家保有としてわかりやすい株主で言えば、日本マスタートラスト信託銀行、日本カストディ銀行の保有があります。しかしこの2つの株主の持株数には機関投資家1社の保有分だけではなく、複数の機関投資家の保有分が含まれています。
例えば日本マスタートラスト信託銀行の159,823株のうち、1社の持株数は50単元未満の可能性がありますし、50単元以上だとしても短期的な保有をしている機関投資家の持株数が含まれている可能性があります。
そのため四季報のように大株主1位〜10位全てを特定株(浮動株でない)としてしまうことは実際には浮動株が多いのに、浮動株が少ない(特定株が多い)と誤認させる恐れがあります。
<ソフトバンクの大株主一覧>
氏名又は名称 | 所有株式数 (千株) | 所有割合 (%) |
ソフトバンクグループジャパン㈱ | 1,914,858 | 40.86 |
JP MORGAN CHASE BANK 385632 | 273,340 | 5.83 |
日本マスタートラスト信託銀行㈱(信託口) | 159,823 | 3.41 |
㈱日本カストディ銀行(信託口) | 92,773 | 1.98 |
STATE STREET BANK WEST CLIENT – TREATY 505234 | 50,136 | 1.07 |
㈱日本カストディ銀行(信託口7) | 49,076 | 1.05 |
SSBTC CLIENT OMNIBUS ACCOUNT | 39,885 | 0.85 |
STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505103 | 35,143 | 0.75 |
JP MORGAN CHASE BANK 385781 | 34,332 | 0.73 |
SMBC日興証券㈱ | 33,486 | 0.71 |
計 | 2,682,852 | 57.25 |

落とし穴(問題点)から起因するリスク
以上のことから、四季報を見て、「浮動株が少ないから人気化したときに踏み上げが期待できる」、「浮動株が少ないからこれ以上の株価下落はしないだろう」といった分析をしてしまうと、意外と浮動株が多くて、ずるずると株価が下落していくということになります。
また新興企業やIPO銘柄においては、ストックオプションの残存数が考慮されていなかったり、IPO直後の企業では四季報が発行されるタイミング次第で上場前の株主状況が記載されていたりと誤認されやすい情報が当たり前のように記載されています。
浮動株を少ない銘柄を探したい場合
四季報や有価証券報告書、招集通知などの企業が開示している大株主1位から10位を確認します。その大株主一覧に企業の親会社やオーナーの持株数の記載があって、それが60%以上の保有比率となっている企業を探すのが確実です。
万が一でも、四季報の<浮動株>や<特定株>の比率を参考にするのはやめたほうが良いです。
また大株主一覧を見る際、特に四季報で確認する場合はいつ時点(○年○月○日現在)の情報かを必ず確認しましょう。
ここでも四季報の情報には落とし穴があって、四季報は四半期に1回発行されているので、大株主一覧も四半期に1回更新されていると勘違いする可能性があります。しかし企業は年2回しか開示していません。そのため四季報の調査に対しても2回しか最新情報を提供していないと考えるのが自然だからです。
*具体的な更新のタイミングについてはこちらの記事に記載しています。
最新でない情報で判断することは大きなリスクになり得ます。企業が開示する情報自体も3ヶ月遅れていますが、いつ時点の大株主一覧かを確認することにより、株価と照らし合わせて現在の状況を推測することができます。
補足として
その他記載自体に間違いはないものの、上場企業の名簿がもつ特性で実態と乖離した数値となっているものとして、<投信>の比率もあります。
<投信>は投資信託、ミューチュアルファンド(一般的にみなさんが購入している投資信託)を指していますが、この数値には国内の機関投資家が運用する<投信>の持株数の比率しか含まれていません。
国内の投資信託よりも海外の投資信託の方が資金は巨大です。そのためこの<投信>の数値は実態を表していないのです。特に利益は低いが成長性の高い銘柄は、海外機関投資家の保有が大きくなりやすいので、実態と乖離している可能性が高くなります。
以上が、四季報の株主欄の見方における注意点についてでした。
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